弐千七年四月拾日

前世物語 弐
336 :自夜[]:2007/04/10(火) 13:57:24 ID:DL5lOrpr0
 >>334さん
 こっちきちゃだめだーっ!!!
 
 >>335さん
 私の母から順に
 
 湖亜
 自夜
 加由
 須磨
 
 でございます。私の曾孫は美厨とでも名付けられたでしょう
 ちなみに、私の父は鬼霧でございます
 もちろん、仮名で、実際はこんなふざけた一族ではございません
 前世物語通して実名は二人だけでございます(一人は姓だけ実名)
 
 物語の視点ですが、この先どうなりますやら・・・によによ

前世物語 弐
337 :自夜[]:2007/04/10(火) 20:36:15 ID:DL5lOrpr0
 前世物語 第二部乱世編 第四十一話 別離 その一
 
 不思議な感じ。
 十年近く離れたくても離れられなかった加由が夕陽に向かって旅立つのを
 私は憎くて憎くてたまらなかった坊主と見送っている。
 もう加由の心を知ることもないだろう。加由も二度と私を見ることはない
 だろう。
 これが子別れというものか。加由は自分の足で歩き始めた。もう親の出る
 幕ではない。ましてや、生者でもない私がすることはない。
 あの、雪の日、私の骸にすがり泣き叫ぶ加由を上の方から見降ろした時に
 私は私が死んだのを理解した。
 自分の死そのものは悲しくも何ともなく、むしろあっけないものだった。
 加由が私の後を追ってもいいと考えた時、私はそれでもいいとさえ思った。
 加由と二人で待っていたら、いずれ迎えが来て田袋が待つ悲しみのない国
 へ連れて行ってくれる。
 代わりに来たのが浪人だった。
 一目であのときの青年だと判った。
 しっかりした身なり。てっきり元の侍に戻っていたと思った。
 
 つづく

前世物語 弐
338 :自夜[]:2007/04/10(火) 20:38:54 ID:DL5lOrpr0
 前世物語 第二部乱世編 第四十一話 別離 その二
 
 その青年と加由が私の土まんじゅうを作っている。何故だろう。
 加由が浪人の後を追う。何故だろう。
 私はその加由の後を追う。何故だろう。
 何故だかさっぱり判らない。判らないが、判らなくてもいいと思う。何故
 判らなくてもいいと思うのだろう。
 その時はこんなことを考えていた。
 どうやら、私は加由から離れられないらしい。そう気付くのに時間はかか
 らなかった。
 私は加由とともに時を過ごした。
 あれほど愛しい加由、その逝く末を案じていた加由。離れられない理由は
 簡単だ。
 だが、それならばなぜ冷静に、いやむしろ冷酷に加由のことを見るだけな
 のだろう。
 加由が倒れようが、怪我をしようが、重い水に苦しんでいようが何も感じ
 ない。
 何故感じないのか考えようとするが、続かない。
 
 つづく

前世物語 弐
339 :自夜[]:2007/04/10(火) 20:41:59 ID:DL5lOrpr0
 前世物語 第二部乱世編 第四十一話 別離 その三
 
 死者とはそういうものかもしれない。自夜、おまえは死んだのだ。生者と
 同じように考え行動することが出来るはずがない。
 これで簡単に納得してしまう。そして、ただ冷酷に見るだけ。
 加由の考えることは大体判る。別に加由の心を覗き込む訳ではない。親娘
 だ。通じるところがあるのだろう。
 しかし、それだけのこと。考えが判ったところでそれに対して何も感じな
 い。
 加由が臼井から逃げた時、どうして私は加由に私を見せたのだろう。
 崖の向こうに臼井の仲間がいることは判っていた。だけど、加由を助けな
 ければという気持ちは私にはなかった。意識して見せた訳でもない。しか
 し、確かに私が加由に見せた。そして、気が付いたら、加由と一緒に崖を
 落ちていた。
 坊主にしてもそうだ。あれほど憎くて憎くてたまらなかった坊主、もちろ
 ん今でも憎い。だが、今はなんの感慨もない。
 今、夕陽の向こうに加由が去ろうとしている。
 さようなら、加由。
 
 第四十二話へつづく


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