弐千七年弐月壱日

■家の言伝え■
231 :[]:2007/02/01(木) 01:12:37 ID:rXQEmklo0
 >>230はん
 狐狸の類が人を化かす時、眉毛の数を数えてその人間の力量を量るんや
 で、狐狸に化かされんよう唾を眉につけてその数を数えれんようにっちゅうこっちゃ
 
 狢はそげな面倒くさいことせんけ、狢には効かん。狸はもともと人を化かさん
 狐のことは、狐に聞いとくれ

■家の言伝え■
233 :[]:2007/02/01(木) 01:26:26 ID:rXQEmklo0
 長生きしとるだけや

■家の言伝え■
238 :[]:2007/02/01(木) 10:22:32 ID:rXQEmklo0
 >>235はん
 暦の夜捲りはよーしらんけど、確かに夜捲ったりはせんな
 今は一日の始まりは午前零時やけんど、江戸時代は夜明けや。その前は今の午前六時ごろや
 日も変わってへんのに捲るとか、とうに変わってんのに捲ってなかったとかが嫌われたんかも
 しれんね

■家の言伝え■
240 :[]:2007/02/01(木) 10:46:43 ID:rXQEmklo0
 >>237はん
 もともと日暮れ時っちゅうのは妖怪の活動時間や
 昔は交通も不便やったし野良作業の帰りに出会うっちゅうたらだいたい顔見知りなんやけんど、日暮れ時
 は赤いし暗いし相手の顔もようわからんから「かはたれそ」っち声かけて確かめたんやな。かは彼であんた、
 たれは誰で「あんた誰?」や
 この「か」と「だれ」がいつのまにか入れ替わって黄昏れになったっちゅうんはどうでもええけんど、
 「かはたれそ」って声かけて返事がなかったり、聞いたことない声やったら妖怪やから、一目散に逃げろっ
 ちゅうわけや。四国だけやのうて、全国だいたいこうやね
 
 「もしもし」っちゅうのは「申し申し」で、「今から申し上げます」っちゅう意味や。電話が出来たころ、英語の
 "hello"に対応する相応しい日本語をどうすっぺっちゅうことで出来た言葉や。もっとも初めの頃は使って
 はったのは交換手で、普通にかける方は「おいおい」やったけんどな
 「もしもし」がかけ声として一般化したんは電話の普及とともにやな昭和の初期くらいかな。まぁ流行言葉や
 時代劇なんかで、色っぽいねーちゃんが「もし、おさむらいさん」って声かけるとこあるやろ。あの「もし」が
 「もしもし」の原型やね。身分が上の侍に声かけるときにいきなり言うと失礼やし俺の後ろに立つなとか言
 われて切られても損やからAttention Pleaseっち最初につけたわけや。「もし」単独で使うんは普通せん
 
 昔話とか言い伝えで「もしもし」が出てくるんは、どこかの段階でまぎれこんだわけやけやね。本質的には
 問題ないやろ。物語にはよくあるこっちゃし、当時どおりの発音自体がもうでけんのやから、多少かけ声が
 変わって伝わったってかまへんね。ちゃんとそういうことがあるっちゅうのを知っとけば、いいわけや

前世物語
676 :自夜[]:2007/02/01(木) 20:32:43 ID:nKzu/TNf0
 前世物語 第二部乱世編 第十二話 山腹 その一
 
 朝、雪を下ろし、水くみをし、朝餉をとり、さむらいは独り出かける。
 掃除をし、昼餉をとり、薪割りをする。さむらいが戻ってくると字の稽古。
 夕餉をとり、話をし、休む。こんな日が何日か続いた。
 ある日、朝餉を終えるとさむらいはついてこいと言う。
 雪の山道を半刻ほど登ると人目につかないよう斜面際に小さな祠があった。
 祠?ちがう。入り口。多分、洞窟。雪をかき分け、入り口を開ける。中は
 暗い。雪の白さに慣れた目はなかなか暗さになれない。
 瓶、菰、俵、そんなものがぼんやり見え出す。
 「こっちが塩、これには乾肉、そっちの瓶は小僧が好きな酒だ」
 奥には作りかけなのだろう、まだ生しい肉がぶら下がっている。
 「拙者の食料庫だ。あと二カ所ある」
 何故何カ所も。そう安全のため。一つがやられても、まだ残りがある。や
 られる?誰に?
 「場所をよく覚えておけ。そのうち乾肉の作り方も教えてやる。拙者が帰っ
  てこなかったら、小僧が使え。上手に生き延びろ」
 さむらいが帰ってこない?どういうことだろう。
 
 つづく

前世物語
677 :自夜[]:2007/02/01(木) 20:42:20 ID:nKzu/TNf0
 前世物語 第二部乱世編 第十二話 山腹 その二
 
 「そんな顔するな。いますぐどうこうという話ではない。ただ、こんな世
  の中だ。明日のことは誰にも判らぬ。だから教えた。それだけだ」
 その日いっぱいかけて、残りの洞窟を回り、山嶺を越えて山の向こうに逃
 げる道を教わった。猟師も知らない道。多分、母も知らない。
 あたりが暗くなりかけて小屋に戻った。その夜は久しぶりに酒が出た。
 「雪兎を捕まえたことがあるか」
 「ない」
 「明日教えてやろう」
 冬、雪に閉ざされた間、獣たちは自分のねぐらから出てこない。ところが
 兎は違う。兎は雪が積もっても平気で出歩く。希にこの兎を追って狐が出
 るという。兎は冬の間の貴重な生肉。
 翌朝早く小屋を出て、山深くはいる。
 「兎は臆病ですばしっこく、目も耳もいい。後ろが全部見える」
 確かに兎の頭を真後ろから見ると両の目が見える。兎からも見えているの
 だろう。
 「だから猟師は罠を張る。罠を張れば兎以外もかかる。そう例えば」
 
 つづく

前世物語
679 :自夜[]:2007/02/01(木) 20:52:34 ID:nKzu/TNf0
 前世物語 第二部乱世編 第十二話 山腹 その三
 
 さむらいは雪玉を傍らに投げる。ビンッと音がして、細縄の輪が宙を舞う。
 「人間でもな」
 気付かなかった。母も罠の張り方は知っているが、他人の縄張りでは罠は
 張れない。
 「食えない獣がかかると猟師達は慈悲なくなぶり殺して捨てる。そんなや
  り方は好かん。拙者は違うやり方でやる。小僧、木に登れるか」
 兎はあまり上を見ない。その必要が無いから。だから、木に登って見てい
 ろと言う。私は雪が落ちないよう気をつけながら木に登り、適当な枝振り
 の枝に腰掛けた。
 「小僧、そこで気配を消していろ」
 さむらいは木の傍らに立つと気配を消した。見た目にはただ立っているだ
 け。静かに息をしている。いや、違う。景色にとけ込んでいる。まるで、
 最初からそこにあるべき物があるように立っている。じっと見ていると、
 さむらいの姿が見えなくなる。周囲の木々と区別がつかない。
 寒い。ただ待つ身はつらい。半刻が過ぎたか、一刻がすぎたか、不意に誰
 かが肩を抱き、私と一緒に見ているような気がした。
 
 第十三話へつづく

前世物語
681 :自夜[]:2007/02/01(木) 21:03:01 ID:nKzu/TNf0
 前世物語 業務連絡21 自夜がweb site開設? ここで、宣伝です
 
 Web Site の改装作業はだいぶ先が見えてきました。更新までもうちょっとお待ち下さい
 避難所では奇特な方がお話を書き込んでくれてます。逝く時は人間やめてからどうぞ
 狢さんのぬらりひょんの話は・・・・・・滞ってます
 
 http://anime.geocities.jp/ojiya1539/ (PC用)
 http://anime.geocities.jp/ojiya1539/m/index.html (携帯用)
 http://anime.geocities.jp/ojiya1539/mujinahouse/mujinajoke001.html (三悪漫遊記)
 http://hobby9.no.land.to/bbs/test/read.cgi/occult/1169303072/l50 (避難所)
 
 青い光が私を囲み、現実逃避へと誘う

前世物語
683 :自夜[]:2007/02/01(木) 23:18:29 ID:nKzu/TNf0
 このあいだから、だらだらと幽霊話を書いてきましたが、じーさん、ばーさん幽霊から子供
 幽霊の話まで書いたところで、今日から暫く、ちょっと指向を変えて書いてみましょうかね
 
 むかぁし、むかぁし、ある山に名もない狢が棲んでおった
 この名無しの狢、この山一番の長生きで、妖怪になって既に何百年もたっとるそうじゃ
 山の獣たちは名無しの狢から生きる知恵などを教わっておったが妖怪は妖怪、怖いものは怖
 い、日頃は名無しの狢に会おうとはせんじゃった。狸たちも、まだ妖怪になってない狢たち
 も山でばったり名無しの狢に会うても知らん顔じゃ
 この山には名無しの狢と親しいものはおらん。たまさか訪れるこれまた妖怪の灰色狐と夜を
 通して酒酌み交わすくらいじゃ
 じゃから、名無しの狢はいつも独りで人を襲い、人を化かし、人を困らせて暮らしとった
 この日も名無しの狢は幼女を喰らい、腹一杯になったので、道端で休んでおった
 そこに、かわいらしいべべを着た五六歳の娘子がめそめそ泣きながら通りがかった
 ふむ、美味そうな娘子じゃわい
 名無しの狢はそう思うたが、腹一杯じゃったので、知らんふりしちょった
 娘子は名無しの狢の前まで来ると、しゃがみ込んでしもうた
 しばらくは知らんふりしちょった名無しの狢じゃが、目の前で辛気くさく泣かれると、せっ
 かくの満腹で幸せな気持ちが削がれてしまう。名無しの狢はとうとう我慢できずに娘子に話
 しかけた

前世物語
685 :自夜 :2007/02/01(木) 23:38:40 ID:nKzu/TNf0
 「ごら、そこの娘。わしは人を喰らう狢じゃど。喰われんうちにさっさと去れい」
 ところが娘子は変わらずに泣き続ける
 困ってしまった名無しの狢は娘子を困らせるために、みるみる見た目もおどろしい大入道に
 化け
 「去らぬと本気で喰ろうてしまうぞ」
 と脅かした。ところが娘子は驚いて逃げるどころか、泣きながらも名無しの狢にこう言うた
 「どうか、喰ろうてください」
 はて、自ら喰ろうてくれとはどういうことかいなと名無しの狢は思うた
 娘子は泣きながらもぽつりぽつりと名無しの狢に語りかける
 「ととうもかかあも戦に巻き込まれて死んでしまいました」
 「喰う為に殺すのは悪いことではないと聞きます」
 「だったら、喰われるのも悪いことではないと思います」
 「どうか、あたしを喰ろうてください」
 「あたしを喰ろうて、ととうとかかあのところへ送って下さい」
 逃げまどう幼女を追いつめて喰うのは名無しの狢の楽しみじゃが、自ら喰ろうてくれと頼む
 娘子を喰うのは気がのらんかった
 名無しの狢は一刻思案し、行商人に化けて娘子を連れて歩き出した
 幾つかの山を越え、幾つかの川を渡って行商人の名無しの狢と娘子はある村に辿り着き、
 ある百姓屋を訪ねた

前世物語
687 :自夜 :2007/02/01(木) 23:55:30 ID:nKzu/TNf0
 その百姓屋の夫婦は一人娘を亡くし、嘆き悲しみながら暮らしておった。一人娘を喰ろうて
 しもうたのは、当の名無しの狢じゃったんじゃがの
 「おや、どうさっしゃった」
 「旅の途中でこの娘子を拾うての、聞けば親を亡くしたと言う。そこで一人娘を亡くしたお
  まえさんがたを思い出しての。どうじゃろう、この娘子を我が子と思うて、育ててくれん
  か」
 夫婦は最初戸惑うた顔しとったが、娘子を不憫に思うたか、行商人に承知したと答えんしゃっ
 た。肩の荷が下りた行商人は礼を述べ道の角を曲がった途端、元の狢に戻り、自分のねぐら
 に飛んで帰った
 多少は心残りのあった名無しの狢は何かのおりに百姓屋を垣間見、娘子が夫婦にかわいがっ
 てもろうとる様子を知って安心した
 それから幾日か経って、ねぐらでくつろいどる名無しの狢は異様の気配を感じた
 「誰じゃ、そこに居るとは」
 気配は纏まってねぐらの宙に浮かんだ。人間には見えん気配じゃ。狢にも見えん。名無しの
 狢は感じとるだけじゃった
 「ぬしは幽霊じゃな。この妖怪である狢に何の用じゃ」
 
 というところで、続きは明日


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