弐千七年正月参拾日

【百鬼】妖怪達の集うスレ【夜行】
305 :[]:2007/01/30(火) 00:47:32 ID:jldYyLCl0
 >猫娘はん
 寝酒に頂きます。おおきに。おやすみなっしょ
 
   ~■b⊂

【本当に】人肉・食人【ウマー?】
175 :[]:2007/01/30(火) 10:05:06 ID:jldYyLCl0
 >>174はん
 妖怪は幽霊と違って喰っていかなならんからな、人間と関わってるといろいろあるんや
 平成ぽんぽこの世界はフィクションやけんど、人間の仕事もっとる妖怪は多かよ
 あんたらの職場にもおらへんか、妖しい奴
 まぁ、時々は人間との接触を断っとる妖怪連中がうらやましくなることもあるわな

前世物語
653 :自夜[]:2007/01/30(火) 21:09:03 ID:jldYyLCl0
 前世物語 第二部乱世編 第十話 散華 その一
 
 静かに筆を紙に降ろす。筆先が紙を撫で撓る。肘を動かせ、肘を動かせ。
 そう念じながら筆を動かす。
 いろは
 三文字に一回の割合で墨に漬ける。大きな字。十字も書かないうちに紙一
 杯になる。
 「紙を替えよう。もっと小さく」
 真っ白な紙が私の前に置かれる。もう怖くない。大丈夫。
 もう一度、大きく息を吸い、ゆっくり吐く。
 いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむ
 うゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせすん
 いろは四十八文字を紙二枚に分けて書く。墨も飛び散っていない。
 「ふむ。色は匂へど散りぬるを 我が世誰そ常ならむ 有為の奥山今日越
  えて 浅き夢見じ酔ひもせず。意味はわかるか」
 「なんとなく」
 「涅槃経の諸行無常、是正滅法、生滅滅己、寂滅為楽を表す歌だ。釈尊の
  入滅の意義を教える教典だ」
 
 つづく

前世物語
654 :自夜[]:2007/01/30(火) 21:11:59 ID:jldYyLCl0
 前世物語 第二部乱世編 第十話 散華 その二
 
 死ぬ意味、人が死ぬことにそんな意味があるのだろうか。母の死にも意味
 があるのだろうか。
 「香り高い花もやがて散る。これが、諸行無常。生き物もやがて死ぬ。こ
  れが、是生滅法。迷いの山々を乗り越えることが出来れば、これが、生
  滅滅己悟りに至り、安静に暮らせる。これが、寂滅為楽だ」
 どんなものでも、いつかは死ぬ。そう割り切ってしまえば楽に生きれる。
 さっぱり理解できない。
 「拙者には理解できん。確かに死は万人に訪れる。しかし、天寿を全うす
  るものもおれば、生まれてまだ目も見えぬうちに死んでしまうものもい
  る。ましてや、このような世の中だ。明日のことなど誰にも判らぬ」
 明日のことなんて判らない。
 「はたして悟りとやらで、心の安静が得られるものなのか。拙者には坊主
  共が詭弁を使っているとしか思えぬ」
 坊さんが嘘をつく?坊さんとはそういうものなのか?
 「まぁ、詭弁でもよい。判らぬのはその目的だ」
 嘘の目的。金儲け。
 
 つづく

前世物語
655 :自夜[]:2007/01/30(火) 21:15:22 ID:jldYyLCl0
 前世物語 第二部乱世編 第十話 散華 その三
 
 「金儲けならよい。が、貧乏人に経を説いて回る連中はどうだ。確かに念
  仏によって来世へ希望を繋ぐことで、一時の心の安静は得よう。だが、
  それは逃げではないのか。これ以上この世に希望を失ってどうする。生
  きる気力を削ぐだけではないのか。それが判っていながら、金儲けでは
  なく何が目的で連中は説いて回る」
 嘘の目的。判らない。
 「小僧、ただ一つ、これは言えよう。学をなせ。字を学び、書物を読み、
  自ら考えよ。この世の摩訶不思議を解くには、自分の眼でしっかり見つ
  めるしかない。拙者はそう思う。判るか」
 半分以上判らない。でも、字を覚え、書物を読むことは、きっと後で役に
 立つのだろう。私はこくりとした。
 さむらいが頷き返す。
 「さて、小僧の字だが、よく書けてはいる。が、少々癖があるな。まずは
  基本を覚えることだ。崩すのは後からでも出来る」
 さむらいは、私の持つ筆ごと手をとり、一字一字形を直す。
 いろはにほへと、いずれ花は散る。
 
 第十一話へつづく

前世物語
656 :自夜 :2007/01/30(火) 22:15:58 ID:jldYyLCl0
 最初私は近代の戦場に戦場故の幽霊などそういるものではないと思っていました
 しかし、目撃談とかを聞くうちにだんだん幽霊が存在するのではと思うようになりました
 戦場の悲惨さ故の幽霊話、大量虐殺や自決の地の悲惨話からくる怨霊などは相変わらず信
 じていませんが、自分が死んだことを理解できずに今までどおりの兵隊生活を続ける話は
 私にとっては非常に生々しいものです
 特筆すべきは、このような日常生活型の幽霊話が大東亜戦争特有と言ってもいいほど急増
 していることです。江戸末期から、昭和維新まではほとんど聞きません。もっとも私が知
 らないだけかもしれませんが
 そこで、大東亜戦争の特色を考えてみました。兵器に限って言うと、科学技術に支えられ
 た兵器の登場が言えるでしょうか。核兵器はとりあえず、いやがる神様を無視して神棚に
 上げておくとして、高性能爆薬、電波兵器に私は着目しました
 度々書き込んでいますが、幽霊の本体はある種の波動です。幽霊になるということは、脳
 内の思考が空間の波動に転移し、それがある範囲で封じ込められることです
 電波兵器、通信や電探のことですね。これらはいままでになかった強力な電磁波を発生さ
 せます。そして、高性能爆薬。この爆破時の衝撃波は空間自体に影響をあたえます
 これらが幽霊になりやすい環境を作り出し、奇襲による突然の死に際してそれまでの日常
 の雑念が残念として幽霊になったのではないでしょうか
 もちろん、確証はありません

前世物語
657 :自夜 :2007/01/30(火) 22:58:49 ID:jldYyLCl0
 さて、今回は実話、もちろん当人達が主張する実話ですが、それに基づき、私が大幅な脚
 色を加えた話を書いてみます
 
 時は大東亜戦争末期、敗色濃くなった帝国軍は連合軍の飛び石作戦により、ある島は玉砕
 を余儀なくされ、ある島は放置されて行きます。連合軍の破竹の進撃を止める力は帝国軍
 にはありません。ただ極力敵の出血を強い、その進撃を遅らせるのみの状況にありました
 そのために空海の特攻まで行われましたが、それはこの話の主題ではありません
 この島は主戦場から取り残される形となり、今後の補給の望みもないことから、駐屯部隊
 は自活の道を模索する状態にありました。そんな戦略的には何も価値がない島にある日突
 然連合軍の艦隊による艦砲射撃が加えられます。連合軍の陽動作戦です。帝国軍の兵力を
 割き、主目的の作戦を容易ならしめるただそれだけのために粗末な木造兵舎に容赦なく三
 十六糎砲弾が降り注ぎます。その結果、この部隊は半数近くの将兵を失います
 半数と言えば、通常の合戦では全滅と評される事態です
 生き残った将兵はそれでも敵上陸に備えて塹壕を掘り、洞窟内に司令所を作り、野砲を隠
 し、味方援軍を信じて電波を飛ばし滑走路を整備します。もちろん敵占領確実となれば、
 滑走路を爆破する準備も平行して行われます
 ところが、陽動作戦ですからその後連合軍は攻めてくる気配を見せません
 島には一種異様な平穏が訪れます。そして、幽霊も

前世物語
658 :自夜 :2007/01/30(火) 23:19:34 ID:jldYyLCl0
 最初は気配です。急造の兵舎となった洞窟内で、見張りのために出動している兵隊の寝床
 にだれか寝ているような気がする
 煙草盆の周りで、実際に居る人数以上で雑談をしているような気がする
 幽霊達はだんだん大胆になってきます。私に言わせると、人に姿を見せるのがうまくなっ
 てきます。軍服の前を開けて、休憩している姿。食事の列に並ぶ姿。小隊を整列させれば
 ちゃんと正規に武装した姿の幽霊の一団が生身の兵士の後ろに並びます。酒保開けの際に
 は酒を購入し、車座で飲んで軍歌を歌います。もっとも実際にお金を払うことも飲むこと
 もないわけですが、当の幽霊達はすっかりその気になっています。やがてその姿もはっき
 りし、誰が誰だかまでわかるようになります。純朴な幽霊達は詐称することなく、皆正し
 い階級章をつけています。その中の将校幽霊達が、その気になって、下士官兵幽霊の統率
 を始め、部隊編成までしてしまいます。幽霊部隊の出来上がりです
 おそらく艦砲射撃の際に即死して、その死んだことを理解できないまま幽霊になったので
 しょう。そして、生身の部隊が洞窟へと待避する際にも一緒に待避し、敵上陸に備えて自
 分なりの反撃準備を整えていたものと思います
 こうして誕生した幽霊部隊ですが、生身の人間にとってはたまったものではありません
 粗末とはいえ、軍隊生活唯一の楽しみである食事の時に、いくら戦友だったとは言え、幽
 霊が隣で同じ食事をしている気になっているのです
 次第に生身の兵隊からも精気が失われていきます

前世物語
661 :自夜 :2007/01/30(火) 23:43:26 ID:jldYyLCl0
 事態を憂慮した司令は遂に意を決し、幽霊将校達を自室に集めます
 翌日、司令は幽霊部隊を整列させ、訓辞をします。諸君らはすでに戦死しているというこ
 と、戦死してまで職務を全うしようという姿には感謝していること、しかしながら諸君ら
 が頑張れば頑張るほど実際に戦力となる生身の部隊の精気が失われることを涙ながらに訴
 えます。そして、どうか、成仏してくれと
 最初は何を言われているか判らなかった下士官兵の幽霊達も、涙をぽろぽろ流しながら俯
 いて聞いています。そして、将校幽霊達の俺たちのいる場所はここではない。俺たちの戦
 う場所はここではないとの説得に、一人、一人と消えていきます
 最後に残った少佐の幽霊が、くるりと司令の方を向き敬礼して言います
 「それでは命により引率してきます。お世話になりました」
 少佐は敬礼の姿勢のまま静かに消えていきました。司令は涙を拭おうともせずに虚空に答
 礼したといいます
 
 彼らがそこで消えたとは私は思いません。残念の束縛から解き放たれた彼らの多くは平時
 は南国の楽園であるその島で、今でもふらふらしているのでしょう
 のどかなその気候が彼らに少しでも安らぎを与えていればいいなと思います

前世物語
662 :自夜 :2007/01/30(火) 23:55:08 ID:jldYyLCl0
 前世物語 業務連絡20 自夜がweb site開設? 宣伝です。狢さんが張り切ってます
 
 はるひが遁走してしまいました。見かけたら、「根性なし〜〜ぃ」と後ろ指さしてあげてください
 狢さんのところは心臓が弱い方、短気な方はやめておいた方が身のためです
 
 http://anime.geocities.jp/ojiya1539/ (PC用)
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