弐千七年正月九日

前世物語
350 :自夜[]:2007/01/09(火) 09:59:12 ID:xuk5MIQd0
 前世物語 第一部前世編 第二十五話 へびもぬけ その一
 
 最初気付いたのはしゃべり方。ちょっと吃るようになった。
 そして梅雨、雷をきっかけに、火袋が躰を弓のように曲げて苦しみだした。
 以前、見たことがある。そして、以前見たとおり、三日三晩のたうち回り、
 苦しみ抜いて、苦しみ抜いて、火袋は動かなくなった。
 私は二回目の涙を流した。
 深い穴を掘った。手刀はまだ駄目にする訳にはいかない。私と加由はまだ
 生き抜かなければならない。だから、素手で掘った。雨で土が柔らかいの
 が助かる。でも、柔らかいのは浅いところだけ。
 火袋を穴に入れ、土まんじゅうを作る。墓標が欲しい。
 「かかちゃ、どうした」
 「ととちゃのね、お墓の石がほしかと」
 「かかちゃ、あれは」
 加由が指したもの。お地蔵様。
 「ちびちゃ、あれはだめだよ。お地蔵様いうて、旅のもんを守ってくれる
  ありがたか神様なんよ」
 「そっか、ととちゃが神様独り占めしたらいかんもんね」
 
 つづく

前世物語
352 :自夜[]:2007/01/09(火) 10:03:36 ID:xuk5MIQd0
 >>351 創ちゃん
 印度で修行し直して虹男に戻りなさいませ。

前世物語
353 :自夜[]:2007/01/09(火) 10:12:53 ID:xuk5MIQd0
 前世物語 第一部前世編 第二十五話 へびもぬけ その二
 
 適当な石を見つけ、加由と運ぶ。よいしょ、よいしょ。加由は楽しそう。
 ずっとずっと一緒に遊んであげていない。同じ年頃の仲間もいない。
 石を置き、加由に簡単な念仏を教え、一緒に唱える。南無阿弥陀仏。
 「かかちゃ、どういう意味な」
 南無は帰依する、阿弥陀は無限の、仏は心。
 「ととちゃが悲しみのない国で暮らせますように、っていう意味よ」
 「そっか、なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
 物心ついて以来、この子は物乞いの旅をしている。普通の、百姓としての
 あたりまえのことを知らない。
 一緒にいてあげよう、遊んであげよう、いろんな事を話してあげよう。
 蹄の音で、思いが断たれる。顔を向けると一騎の騎馬が駆けてきて、私ら
 を蹴散らすように近づき、土まんじゅうを、踏んだ。
 髪の毛が逆立つのが判る。全身の毛穴から怒気が吹き出すのが判る。
 加由の方が動きが速い。手近な石を投げつける。石が宙を舞い、馬の首筋
 に当たり嘶く。振り返る赤い眼のさむらい、柄にに手をかける。
 私は腰の手刀を掴んだ。
 
 つづく

前世物語
354 :自夜[]:2007/01/09(火) 10:17:32 ID:xuk5MIQd0
 前世物語 第一部前世編 第二十五話 へびもぬけ その三
 
 次々に石つぶてをぶつける加由。暴れる馬、泥濘に足を取られる。さむら
 いが馬ごと転ぶ前に私は手刀を抜いて走っていた。
 素早く起きあがろうとするさむらいに辿り着いた私は満身の力を込めて兜
 を蹴飛ばす。一瞬あらぬ方を首が向き、戻ってきた顔の真ん中に両手で握
 りしめた手刀を突き出す。
 かつん。
 しまった、兜に当たったか。ずぶずぶ。何かに潜り込むような手応え。
 私はいつの間にか瞑っていた目を開けた。
 眼と眼の間に手刀がある。左右の眼は別の方を向いている。さむらいが暴
 れだし、手刀ごと私ははじき飛ばさる。眉間から血潮と脳漿を飛び散らせ
 ながら、さむらいは無茶苦茶に暴れ、無茶苦茶に吼えた。
 倒れ痙攣していたさむらいが動かなくなってようやく私は立ち上がった。
 加由、かかちゃやったよ。あんたをまもったよ。どうしたの加由。何故後
 ずさるの?
 手刀を握ったままなのに気付く。硬直する指を何とか外し、鞘に収める。
 遠ざかる蹄の音。蹄の音?しまった。
 
 第二十六話へつづく

【百鬼】妖怪達の集うスレ【夜行】
115 :[]:2007/01/09(火) 10:43:12 ID:xuk5MIQd0
 仲間が増えてきてうれしかね
 思わず、踊っちゃうよ、わしぁ
 
 >人間さん
 生身で入ってくるとはいい度胸しちょるの
 顔文字の人は怒ったら妖怪仲間でも容赦せん冷たいお人や
 首、洗って覚悟しときな

インターネットに関するオカルト総合スレ
5 :[]:2007/01/09(火) 18:49:42 ID:xuk5MIQd0
 よくあるこっちゃ


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