弐千七年四月弐拾壱日
しかし、なんやね
ようやっと、物語終わったね
狢さ〜ん、ぬらりひょん
次の企画はなんにしょうかね
ぬらりひょん
ぬらりひょん
ぬらりひょ〜〜〜ん
あーあー、きこえへん
前世物語 弐
606 :自夜[]:2007/04/21(土) 11:25:13 ID:7/NGqK4T0
業務連絡です
複合検索エンジンの「葡萄缶」さんへの Web Site の登録が完了しました
チェックが厳しいところは厳しいですね
「オリジナルイラスト」でも申請したんですが、数が少ないと弾かれたところもあります
まだ、一件登録待ちがありますが、これで申請したところは全て登録していただきました
(まぁ、ヤフーは三ヶ月待ちが当たり前みたいですし、普通にヤフーのサイト検索で出てくるからよしとしましょう)
どこかで見かけたら、お手柔らかにお願いします
また、こんな検索サイトも登録してみるといいよっていうところがあれば、紹介していただくと嬉しいです
前世物語 弐
607 :自夜[]:2007/04/21(土) 11:59:49 ID:7/NGqK4T0
前世物語 第二部乱世編 第五十一話 握飯 その一
「だれかぁーおるのかぁー」
そうつぶやいた後、坊主は目を微かに開き、視線を宙に向ける。
「だれかぁーしらんがー、わしにぃーうらみをーばーもつもんかー」
恨み?そう恨み。確かに持ってはいる。
「ながたーむらのーもんかー、よしはらーむらのーもんかー」
末永く田畑が実る村。私が生まれた村。良き田畑が広がる村。田袋と結ば
れた村。わたしの故郷。
坊主の目が私の方に向き、また違う方に向く。
「おなごーのーたましーかー」
坊主はふぅと息を吐き、また目を閉じる。
「じーやーかー」
消え入るような坊主の声。
「おのがーこーにーひかれたーかー、そも、わしがーにくいーかー」
子供、私の子供。加由。だが、加由に惹かれてここに来た訳じゃない。
「さぞかしぃーわしをぉ、にくんじょるじゃろーなー」
どのくらい、憎いのだろう。今の私には判らない。
つづく
前世物語 弐
608 :自夜[]:2007/04/21(土) 12:01:28 ID:7/NGqK4T0
前世物語 第二部乱世編 第五十一話 握飯 その二
「わしをぉー、つれにきたかー」
連れに来た?そんなことはない。
「あんしんしーやー、わしゃー、じきそっちへーいくけー」
こっちに来る?私は顔をしかめる。
暫く経った後、坊主の目がまた開き、首を少し動かす。
「そこのーみてみぃー、にぎりめしー、おめーのまごがのー、まいにちぃ、
はこんでくれよー」
米の握り飯。米はおろか、雑穀の一粒もなく、只老人の屍を喰らう村もあ
る。やがて老人もいなくなり、餓鬼同士で喰らい合いをするのだろう。そ
して最後に残った者共は、生きながら物の怪にでもなるのかもしれない。
「おめーに、にーてーよー、きのつえーこぉじゃ」
気が強い?私はあの雨の夜。最後に放った矢が雨に滑り、空しく泥田に落
ちたのを思い出していた。呆然と砦を前に立ち尽くしていたのを思い出し
ていた。一矢報いたかった。
「あんときぃ、わしぁのー、たしかにぃーかんじゃやったー」
そんなことは、浪人の話から知っている。
つづく
前世物語 弐
609 :自夜[]:2007/04/21(土) 12:03:57 ID:7/NGqK4T0
前世物語 第二部乱世編 第五十一話 握飯 その三
浪人の主家、南の馬鹿者共が戦いに敗れ落ちのびていた頃、主家に見放さ
れた草の坊主と間者の希人は進退窮まってしまった。
希人は敵方、東の馬鹿者共への寝返りを画策し、坊主と袂を分かつ。
希人は坊主の存在を危険と感じ、東の馬鹿者共の更に敵である天主側に坊
主を売る。
坊主は捕縛されたものの、惚けた口調と証拠のなさから釈放される。
もっとも天主側に坊主一人をかまう余裕が既になかった。
やがて、敵方、東の馬鹿者共が郷に攻め入り、私達は焼け出された。
希人は結局東の馬鹿者共には信頼されず、この時処刑された。
私達が一揆を画策している時、東の馬鹿者共がその一揆の情報を掴んでい
ることを坊主は知っていた。
このままでは一揆は返り討ちに会う。
だが、坊主は私達には何も話さなかった。
一揆に乗じて、東の馬鹿者共の手が空いたところを南の馬鹿者共が襲う、
ただそれだけのために。
一揆は失敗した。南の馬鹿者共も行動を起こせなかった。
第五十二話へつづく
前世物語 弐
610 :自夜[]:2007/04/21(土) 12:06:51 ID:7/NGqK4T0
前世物語 第二部乱世編 第五十二話 黄泉 その一
坊主はとぎれとぎれ、当時の状況を語る。
今更、そんな話を聞かされて、何になるのだろう。坊主の当時の事情が判っ
たところで、あの日、額を射抜かれた乞食の相棒は帰ってこない。一揆に
倒れた村人は帰ってこない。散り散りになった仲間は帰ってこない。
田袋は帰ってこない。
私の故郷はもうない。
南の馬鹿者共も、浪人を捨て、再起もかなわず没落していった。
主家を失った坊主は武士を捨て本物の坊主として戦いの犠牲となった百姓
や町人を弔う旅に出る。
死者を弔ってなんの役に立つのだろう。あの日の加由の言葉を思い出す。
それで、慰められますか。
長い瞑目の後、目を閉じたまま坊主が囁く。
「じーやーよぉー、じんせーむなしーもんだ。はかねーもんだ」
坊主は深く息を吐き、それから動かなくなった。
白い霧が静かに流れ出、一度も躊躇うことなく宙に散っていった。
坊主は私を追い越して、悲しみのない国へ行った。
つづく
前世物語 弐
611 :自夜[]:2007/04/21(土) 12:09:33 ID:7/NGqK4T0
前世物語 第二部乱世編 第五十二話 黄泉 その二
私は坊主の躰が朽ちていくのを見ていた。
窪んだ眼窩が更に窪み、痩けた頬が更に痩け、生気のない顔が更に土色に
変わる様を見ていた。
この枯れた躰のどこに腐る肉がついているのだろう。死臭が漂うのが感じ
られる。
枕元の握り飯の白さで、夜が過ぎ、朝が来たのを私は知った。
「じーさん。めしだ、めしー」
あれは須磨の声。丘を駆け上ってくる元気な声。
握り飯はおそらく加由が握ったもの。
加由は心から坊主を許したのだろうか。
「よー、じーさん。にぎりめし、またもってきてやったぞー」
須磨が勢いよく菰をたくし上げる。
すぐに異変に気付いたのだろう。須磨はその場に立ち尽くす。
その可愛い手から握り飯が落ちて、土間を転がる。
俯いた須磨の肩が震え、涙が頬を伝い握り飯を追うように土間に落ちる。
「ちきしょう」
つづく
前世物語 弐
612 :自夜[]:2007/04/21(土) 12:12:42 ID:7/NGqK4T0
前世物語 第二部乱世編 第五十二話 黄泉 その三
須磨は膝をついて大粒の涙を落とす。
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう」
私が最後に涙を流したのは何時だっただろう。
そのうち、須磨は床を叩き出す。最初は弱く、そして強く。立ち上がって、
柱に拳を打ち付ける。小屋が揺れる。何度も何度も打ち付ける。その間も
大粒の涙は止まらない。
「ちくしょう」
私はふらふらと小屋の外に出る。背後から須磨の声がする。
「ちきしょう、なんで死んじゃうんだよーっ。一緒に百姓の国つくるって
言ったじゃないかー」
百姓の国?
百姓の国。それは田袋の夢、私の夢。そして浪人も見ていた夢。
いつか本当にそんな世の中が来るのかも知れない。そんなことをぼんやり
思いながら、私は掘っ立て小屋を後にした。
さよなら、須磨。
それから十年、尾張生まれの猿が奥州を平定し、戦乱の世が終わった。
第二部 完
前世物語 弐
613 :自夜[]:2007/04/21(土) 12:15:19 ID:7/NGqK4T0
最終回特別ということで、二話分一挙に掲載しました
長い長い連載におつきあい頂けた方々には
心よりお礼申し上げます
とってもサンキューでした
んじゃ、また来週
前の日に逝く
次の日に逝く
ほげたらもどる
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