弐千七年参月弐拾八日

前世物語 弐
215 :自夜[]:2007/03/28(水) 09:53:19 ID:nviY2P5/0
 >>214さん
 >幽霊だった自分も、「現在の自分」でないという意味では前世に含まれる
 そうですね。とすれば、スレタイは当分このままでいいのかな
 
 >連載の行われている雑談スレという認識
 まったくもって、そのとおりです
 
 よろしければ、ごゆっくりしていって下さい

【百鬼】妖怪達の集うスレ【夜行】
397 :[]:2007/03/28(水) 15:24:52 ID:nviY2P5/0
 >>395 生きている屍はん
 屍はんは千里眼の持ち主かいな
 土曜日は、正に「風船赤芽槲」の樹の下で呑んでおった
 桜みたいにどわーっと咲いとるわけやないが、色合いがなかなかええ
 今晩こっちの龍はんが暴れて雨やったら、桜のサイトでも見ながら呑んでみるわ

前世物語 弐
220 :自夜[]:2007/03/28(水) 18:32:45 ID:nviY2P5/0
 まぁ、次スレのスレタイは、まだ先の話しなんで、ゆっくり考えます
 
 それまでは従来通り、第二部と幽霊談義をここで連載、楽しい妖怪ライフ等は
 Web Site の方のみに掲載していきますので、それはそれとして、前世・幽霊・妖怪
 についてまったりでも殺伐でもいいですけど、ごゆるりとご歓談下さいです
 
 明日(三月二十九日木曜日)は物語の方は勝手ながらお休みします

前世物語 弐
221 :自夜[]:2007/03/28(水) 18:41:04 ID:nviY2P5/0
 前世物語 第二部乱世編 第三十二話 攪乱 その一
 
 とにかく三日間は正面の攪乱に努める。山向こうの部隊が浮き足立つよう
 であれば、そこから脱出する。山向こうが動かなければ、正面から脱出す
 る。
 「小屋正面以外には手を出すな。放っとかれれば、相手は余計なことを考
  える。それがこちらの付け入る隙だ」
 脱出後、落ち合う場所の確認だけ行い、おにちゃと私は別れた。
 小屋に戻ることはない。幸い今年作った果酒は飲み干している。未練はな
 い。
 命が無事であれば、何回でもやり直せる。それが、長年の経験でおにちゃ
 が身につけたもの。そして私がおにちゃから教わったもの。
 私は森中を慎重に進み、小屋の見えるところまで出た。相手はまだ隠れた
 つもりになっている。まず、見えるところに敵を出さなければいけない。
 小屋は一見何事もないように立っている。既に一通りは詮索されたのだろ
 う。何もなくて、さぞ気落ちしたことだろう。
 私は小石を拾い集め、懐に入れる。そして、髪の毛を数本千切り、拳大の
 石に結びつけ、木立の生え具合を測った。
 
 つづく

前世物語 弐
222 :自夜[]:2007/03/28(水) 18:44:46 ID:nviY2P5/0
 前世物語 第二部乱世編 第三十二話 攪乱 その二
 
 髪の毛を端を持ち、石を回す。あまり強く回すと音が出る。あまり弱いと
 小屋まで届かない。小屋まで五六十間くらいか。頃合いを見て、髪の毛を
 手放す。石が音もなく、飛んでいく。
 私は傍らの木に登り始めた。暫くして、石が小屋の屋根に当たる。ちょう
 ど屋根の上の錘石の縁にあたり、石は屋根をはね回り大きな音を立てる。
 私は木の途中で小屋の方を伺う。案の定、小屋の中で騒動が起こっている
 気配。一人の雑兵が入り口から外を伺う。きっと、私達が小屋にはいるの
 を待ち伏せていたのであろう。
 木の枝振りのいい高さに落ち着き、目を閉じる。動揺の気配。小屋の外。
 あの草むらの中、あっちの藪の中。
 私は枝伝いに木を移動する。慎重に、音を立てないように。
 何も急ぐことはない。これからこの辺りは真の闇に向かう。闇は人に恐怖
 を与える。それに小石でほんのちょいと後押しすればいい。
 おにちゃの気配は近くにない。おそらく最前線の小屋の辺りの部隊と本体
 と思しき正面の部隊の間の伝令を待ち伏せしているのだろう。
 情報の途絶は恐怖を倍にする。
 
 つづく

前世物語 弐
223 :自夜[]:2007/03/28(水) 18:47:32 ID:nviY2P5/0
 前世物語 第二部乱世編 第三十二話 攪乱 その三
 
 最初の動揺は収まった。私は手を出さない。おそらく先ほどの音の原因に
 は思い至ってないだろう。疑問は時間と共に不安に変わる。その不安が大
 きくなり、行動に出る直前、私は小石を投げる。
 今度は屋根の上で小さな音。だが、小屋の中の騒動は先ほどと比べものに
 ならないくらい大きい。悲鳴さえ聞こえる。
 たまらず、雑兵が一人小屋から飛び出す。草むらから侍が飛び出し、雑兵
 を叱責する。
 雑兵は渋々小屋に戻り、侍は草むらに戻る。
 もう隠れなくていい。あなた達の企ては露見した。
 私はゆっくり草むらの侍の方に移動する。小石を四つ手に持つ。
 草むらの侍の背後に小石を落とす。侍がビクッとする。二つ目の小石、一
 間ほどずらして落とす。侍が振り向く。侍は音がした方を凝視する。その
 目線から外れてまた一間先に小石を落とす。侍はすぐさま目線を移す。
 侍の右手が刀の柄にかかり、音の方へ躙り寄る。
 最後の小石を更に一間先に落とす。その先には別の侍が潜んでいる。
 「でやぁぁぁ!」
 
 第三十三話へつづく


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