狢の妖怪談義


第七回 妖怪「ぬらりひょん」



わしら妖怪、妖怪ゆーても人によって定義が異なるからややこしいんやけんど
まぁ、それは神棚にでも上げといてやな

妖力を使い、人を妖かす存在とばかり思われとるけど、実際は妖力使えるんは、
ごく少数やし、その妖力かて、超能力にちょっと毛がはえとるくらいや

今回は、その妖力が使えんで、意外にも有名になっとる妖怪の話しょうか
水○先生の御陰で、すっかり悪の大将みたいになっとるぬらりひょんちゅうじいさんの
妖怪や。○木先生が、どっからヒント得たかはしらんけんどな、そのじいさん妖怪は
実はなんも妖力使えんのや

じいさん妖怪、もとは普通のじいさんや

戦乱の世が去ってな、徳川の殿さんの天下になると、いままでせいぜい港で沖給仕の
大将やっとったような流通関係の商売が一挙に花ひらいたんや。え?大船建造禁止令
が出てからあかんようになったはずやて?そりゃ、歴史の先生の方が間違うとる

徳川の時代になって、何が一番変わったかってゆーとやね、平地の城下町の発展や
しかも戦争のための城やのうて、行政、まぁ政治やな、それのための城下町の発展や
自らは食いもんを生産せん都市の出現や
それまでも、京とか政治機能のある都市はあったが、京の町のまんなかに田畑
があるくらい、今の都市からはかけはなれたイメージや
ところが江戸を初めとする城下町は全く今の都市の原型といっていい
その都市機能をささえとるのが流通や

水すら外から入れとったくらいや。なんたら上水とかの地名でいまでもわかる
上水っちゅうのは今で言う上水道やな。なんと、町中では地下を通しとったの
もある。下の方でも流通はととのっとった。うんちとかしっことかは高値で取
引されて今のちばらぎ県とかの農家に引き取られとった

ゴミすら町々でまとめて海に運び一定の場所に捨てとったんや。元祖、夢の島
やな。今ではその上に沢山の人が住んどる。江戸時代のゴミ捨て場とは知らん
とな

さて、世界で最初に海上ゴミ捨て場を作った江戸の町やけんど、町中に田畑とかない
食いもんはじめ、ぜーんぶよそから運んでこなあかん都市や

陸路でっちゅうのもなかなかむつかしい。大名行列が通る五街道かて、せいぜい今で言う
片側一車線の一方通行や。騎馬同士がすれ違う時は、どっちかが下馬して馬おさえとかんと
あかんっちゅう笑い話のような道や

実は、太古の昔、大和朝廷とかなんとかの時代、この国には幅二十五間の今で言う高速道路
みたいな道が張り巡らされた時期もあったんや。さすがにアスファルト舗装やない。砂利舗
装や。目的は国防やな。阿呆な大王がおってん。だいおうちゃうで、おおきみやで。で、そ
の大王が支那に喧嘩ふっかけよってな、大負けしおったんや

で、支那が攻め込んでくるかもしれんゆーて大慌てで作った道や
この道の御陰で何万っちゅう軍隊をあっというまに九州に派遣できるようになったんや
そんとき監視任務に徴発されたんが防人やな

どうやら支那は攻め込んでこんらしいっちわかったら、問題になるんはこの立派な道の
維持費や。あっというまに民間に払い下げられて田畑や。田畑一反の基準単位は一町や
当時の町は間と関係あらへんから、二十五間を割り切れんのやな。で、中途半端な幅の
土地が余ることになる。今でもこの中途半端な土地を見つけることで、太古の高速道路
を見つけることができるんや

その後、元寇やらなんやらあったけんど、どうせ道つくったかて無駄に終わる。また、
隣国、この場合は国内の国やな、その隣国から攻められる危険もあるっちゅうんで、
実に昭和の三十年くらいまでこの国は道の整備を千数百年間放棄しとったんや

まぁ、馬車文化がなかったから、それでんよかった。なまじ戦車とか馬車があるばっ
かりに全ての道は羅馬に通じるとかなんとかゆーて、道ばっかり整備しとった欧羅巴
みたいに何千年も戦争ばっかしとるとこよりよっぽどええ

こんなん、教科書に書いてないやろ

日本の教科書見とったら、なんやらの役とかゆーて戦争ばっかしとって、百姓は水ばっ
か飲んどったように思えるけんど、同じ密度で欧羅巴の戦争書いてみぃ。百科事典より
厚うなるど。日本はやな、圧倒的にのほほーんとしとった時期が長いんや。戦国時代か
て、欧羅巴がたまさかのほほーんとしとった時期より戦の数は少ないんや。使うた武器
は世界一やったけんどな

いつ、ぬらりひょんでてくんねんって思うとるやろ。こういう前提条件を知らんとぬら
りひょんを初めとした日本の古史古伝を聞く資格はないんやで、ほんまは

つづく

注釈:狢さんが避難所である「狢屋敷」スレにうぷされているものです
   現在連載中      断中です

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狢 屋 敷に逝く さぁ、妖かしの世界へ逝こうか
前世物語に逝く 心が健全なもんはやめとった方がええ

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