人生相談 オカルト相談
- 103 :自夜 :2006/12/11(月) 15:28:44 ID:AhOXgInU0
- まぐろさんへ、質問です。
昔、幽霊をやってたとき、足がちゃんとついていたんですが、実は幽霊ではなく
何か別の物だったのでしょうか?
- 105 :自夜 :2006/12/11(月) 16:33:38 ID:AhOXgInU0
- >>104さん
回答ありがとうございます。亡霊ですか? 経験上、幽霊と亡霊は一緒のものと思っています。
昔、雪の峠道で逝き倒れちゃいまして、それから暫く幽霊やってました。
今は生まれ変わって普通の人間やってます。前世と幽霊だった頃の記憶はありますが、霊感と
かは今はありません。
- 109 :自夜 :2006/12/11(月) 21:19:26 ID:AhOXgInU0
- >>106のまぐろさん
私も、最初は前世の記憶なんてなかったですよ。
ドライブしててとある山道を通っているときに何の前触れもなく「あ、ここ、私が
死んだ所だ」と思い、それから後すっかり忘れていた映画のストーリーを思い出す
ように前世の記憶と幽霊だった頃の記憶が蘇ったんです。
だからって、それから人生が変わるわけでもなく、今でも平々凡々と生きています。
- 112 :自夜 :2006/12/11(月) 22:28:20 ID:AhOXgInU0
- >>111 捜査官さん
うちの娘達は大トロが大好物なんですが、まだ10代になっていないからいいですよね。
>>110 まぐろさん
概視感とは違うんですよね。概視感って初めての所なのに知っているような感じがする
ってやつですよね。それはそれで、何回か感じたことはありますが。
例の山道は、何回か通ったことある山道だったんです。それまで別に何も感じなかった
んですがね。その時だけ、本当に忘れてたことを思い出したように記憶が蘇ったんです
よ、一挙に全部 っていうか、前世と幽霊時代の2話分。
日頃忘れている昔のドラマやアニメでも、何かの拍子に思い出すとき、登場人物の多く
がパっと思い浮かぶでしょ、そんな感じ。
- 116 :自夜 :2006/12/12(火) 09:31:47 ID:Jo6IBtXd0
- >>115さん
普通に今の人生を覚えている程度には覚えていますよ。
時代は今で言う戦国時代ですかね。乱世っていう感じはしなかったですが。
普通の農村の娘でしたよ。まぁ、村が焼かれて放浪したり、最後には野垂れ死ん
だわけですが。
まぐろさんと捜査官さんに迷惑でなければ、もうちょっとお話ししてもいいですけど。
- 118 :自夜 :2006/12/12(火) 17:01:36 ID:Jo6IBtXd0
- >>117のまぐろさん
それじゃ、お言葉に甘えて、ぼちぼち身の上話でも・・・・・・
生まれたのはつちのとい(己亥)の年、天文8年になるのかな、
当時はだれも年号なんて使ってませんでした。京から遠かったし。
今からざっと470年前ですか。生まれた場所は普通の農村。
50戸くらいの集落。300〜400人くらいですか。兄弟は多かった
ですね。7〜8人。生まれてすぐ死んだのも加えると10人以上。
んで、私は末っ子。とーちゃん、かーちゃんは村中でも年寄り
の部類だったかな。一番上の兄が嫁さんもらってそのお祝い
の時に「きれいなひとやな〜」って思ったのが前世での記憶
の始まり。
たぶん、続きます。
- 120 :自夜 :2006/12/12(火) 18:21:54 ID:Jo6IBtXd0
- >>119さん
まだ、はじまったばかりなんですが。
でも、文書を書くって難しいですね。(現世では)これでも文学少女だったんですが。
で、今のうちに書いておきますが、私のHN「自夜」は前世の境遇が似ていることから
某大物漫画家の某作品の登場人物からパクったものです。
本人がバラしているんだから、今後パクりだ、ってな指摘は無効ですよん。
では、次回予告・・・・・(−_−;文章が思いつかん・・・・・
では、第2話 村祭 お楽しみに。
- 121 :自夜 :2006/12/12(火) 18:40:39 ID:Jo6IBtXd0
- 第2話 村祭
せっかくの連載物ですからサブタイトルつけました。
第1話は「物心」にしておいてください。
私の育った村は三方を山に囲まれ、一方は開けていました。
開けた先の方、5里ほどいくと、港がありました。米は半分は
年貢に、残り半分は納米として氏神様に納める習わしで、
日頃は米のご飯を食べることはありませんが、雑穀もけっこう
とれていましたし、山にはうちの村の猟区があって、鹿、猪、
兎、山鳥などがとれ、また港まで行けば交換で魚も手にはい
るので、食生活は今と比べても、そんなに遜色あるものでは
ありませんでした。それでも時々下米と言って氏神様の所に
集まって食べる米のご飯は御馳走でした。
山の方、4里くらい離れたところにおっきなお宮さんがある村
があって、お祭りの時に連れて行ってもらうのがとても楽しみ
でしたね。そこでは餡入りの餅が売っていて、この世のもの
とは思えないほど美味しいと思っていました。餡と言っても
甘くはなく、塩味の餡なんですがね。
たぶん、続きます。
- 122 :自夜 :2006/12/12(火) 20:45:56 ID:Jo6IBtXd0
- 第3話 童遊
食べ物のはなしの続きですが、味付けはだいたい塩味で
したね。副食はもちろん、主食の雑穀、だいたい粥にするん
ですが、これも塩味。海水だけで作った魚の干物ってあり
ますよね。全部そんな味。味噌とか醤油とかはなかったなぁ。
塩は港で交換で手に入れていました。港の方は穀物が
育たない土地なんで、けっこういい率で交換していたよう
です。
服装は男も女も老いも若きも単衣、着流しですね。野良
作業の時はこれにズボンみたいなのを履いて足に布を
まきつけます。今から考えると破傷風の予防でしょうか。
蝮よけだったのかも知れません。足に巻く布は柿の皮を
腐らせた汁に漬け込んでいましたから。
野良作業は大人の仕事。10歳くらいまでの子供は遊ぶ
のが仕事でしたね。
男の子の遊びは戦争ごっこ。時代ですねぇ。でも、今みた
いに情報が発達していないから、いい加減な知識でする
訳ですよ。なぜかお姫様を連れて逃げた方が勝ちみたい
なルールになってたり。また、そのお姫様役(男の子)の
仕草がおかしくて、観戦組(大人+女の子)も大笑い。
女の子の遊びの主流は、まぁ、いまで言うとままごとです
かね。何故か、題材は家事ではなく、野良仕事なんですが。
たぶん、続きます。
- 123 :自夜 :2006/12/12(火) 22:40:12 ID:Jo6IBtXd0
- 第4話 教育
学校みたいなもんはありませんが、1里ほど離れた隣村
のお寺に行くと、坊さんがいろんなことを教えてくれましたね。
「じんせーむなしーもんだ。はなねーもんだ」ってのが口癖の
坊さんでしたが、私よりずいぶん長生きしてます。80くらい
まで生きたんじゃないかなぁ。床の上で往生されました。
ずるいですね。こっちは野垂れ死にですよ。野垂れ死に。
それはさておき、坊さんから教わったことで一番印象に残っ
ているのは算術です。なんでも役人に年貢をちょろまかされ
ないように百姓には算術が必要とか。方程式はなかったけ
ど、今で言う鶴亀算くらいまでは教わりましたねぇ。何故か
出てくる動物は雉と猪でしたが。勉強と言うより、クイズ感覚
でしたね。
読み書きも教わりました。仮名だけでなく漢字もけっこう教
わりました。とーちゃんかーちゃんも読み書きできたから、
識字率はけっこう高かったのだと思います。
でも、氏神様の祭りでは仮名でも漢字でもない字を使って
いましたね。これは、結局教わることなく終わりました。
一番上の兄は知っていたようですから、総領にしか教えな
いのかも知れません。
遠いところ(歩いて一月くらい)の所に京というそれはそれは
大きな町があって、天皇様(呼び方はちがったかもしれませ
ん)とそれをお守りする将軍様がお住まいになられている。
ってなことも、この坊さんから教わりました。
そして、全国に太守様(守護大名のことですかねぇ)が派遣
され日本を治めていなさるが、最近は私腹を肥やした莫迦
共が幅をきかせてあちこちで戦が起こっているという話も
ききました。
たぶん、続きます。
- 125 :自夜 :2006/12/12(火) 23:25:30 ID:Jo6IBtXd0
- >>124さん
この前も、どこぞのスレで間違えられましたが、「びゃくや」ではなく「じや」です。
そこんとこ、よろしく。まぁ、どーでもいいですけど。
- 126 :自夜 :2006/12/12(火) 23:44:54 ID:Jo6IBtXd0
- 第5話 文化
今までとーちゃんかーちゃんと書いてきましたが、正確には
「ととちゃ」「かかちゃ」のように言っていたと思います。
当時の発音は、今の日本語よりもっとにゃーにゃーした感じの
ものでした。名古屋弁ほどでもありませんが。だからほんとは
かかちゃでなく、きゃきゃちゃみたいな感じかな。
上の兄は「うえのおにちゃ」でしたか「うえの」「なかの」「しもの」
と「おにちゃ」「おねちゃ」の組み合わせで兄弟を呼んでいた
と思います。実際の数は組み合わせより多いので、区別する
ときは「なかの」に「うえの」「しもの」をくっつけて呼んでましたね。
坊さんは「ぼーさん」でした。名前を呼ぶことはまずありません。
上の者が下の者を呼ぶときはあだ名みたいなもので呼んでま
した。だからというわけではありませんが、兄弟の名前は覚え
ていません。
百姓は公式には名字はもてませんが、役人がいないときは
普通に名字を使っていましたね。役人は滅多に村にきませんし。
役人といえば、家族からは役人は恐い者だと教えられてきまし
た。でも、坊さんは「こわがらんでえー、百姓がうえじにゃ、やつ
らもうえじにじゃ。わしもうえじにじゃ。百姓には頭下げんといか
んのや」
と言われました。ずるい坊さんでしたが、徳はあったのかもしれ
ません。
たぶん、続きます
- 127 :自夜 :2006/12/12(火) 23:59:45 ID:Jo6IBtXd0
- 第6話 酒宴
おっきなお宮さんがある村には今で言う作り酒屋があって、
お宮さんと店主様に献上する酒を造っていました。が、
私ら百姓の口にはその酒は入りません。
ちなみに、そのお宮さんの祭神は戦いの神様で、建物こそ
建て変わっていますが、今でもその祭神さんをお祭りしてい
ます。
驚くことに、酒屋さんも今もあります。当時からずっと続いて
いるかどうかまでは知りませんが。
私らの氏神様はそのお宮さんに仕える立場の神さんということ
になってますが、実は例の文字で戦いの神様に負けた土着
の神であり、以後その神様に仕えているが、いつか仕返しし
てやるということが書いてある木板がご神体であることを村の
ものはみな知っています。
その氏神様は今では場所が変わり、見かけは立派な神社に
なっていますが、ご神体が昔のままかどうかは判りません。
祭神の御名前は昔のままですし、由来が一切記されていない
ことから、私らの氏神様に間違いないと思います。
それはさておき、私らの村の男衆は酒好きで、週一とまでは
いきませんが、月一以上のペースで氏神様のところで酒宴を
開いていました。酒は納米から作った濁酒で、もちろん役人に
は内緒です。
ひょっとしたら、氏神様の志を尊び、時々集まっては誓いを新
たにし、「いつか復習してやる〜〜」と気勢を上げていたのかも
しれません。
単なる酒好きにしか見えませんでしたが。
たぶん、続きます。
- 129 :自夜 :2006/12/13(水) 00:23:10 ID:JFOXLboS0
- 第7話 女酒
前回の酒宴の参加資格は家長と総領(跡継ぎのことね)だけ
で、女子供は留守番です。っていうのは嘘で、酒宴の間、女
子供は別の所に集まり、飲み食いをします。
飲食物は持ち寄りです。飲み物は雑穀で作った濁酒や山苺
等で作った果実酒です。子供も飲みます。きっと、アルコール
分は今のお酒よりずいぶん弱かったと思います。
果実酒はほんのり甘い感じがして、私は好きでしたね。雑穀
の濁酒はとにかく酸っぱい。これを好んで飲む女性もいました
が、主に総領でない男の子(と言っても青年部ですね)の飲
み物です。この連中は女子供達の輪からちょっと離れたとこ
ろに陣取って、たいてい静かに飲んでました。
この連中(若衆と呼んであげるべきですね)の半分以上は
近いうちに村を出る運命にあります。田畑が限られているから
仕方のないことです。
さて、今も昔も女性が集まるととにかくお喋りです。日頃黙々
と野良作業をしているので、その反動なんでしょうか。
酒が進むにつれて、話題もだんだん卑猥な方に移っていきま
す。子供達にはいい性教育になりますが、若衆はますます
縮こまってしまいます。
女酒が氏神様のところで出来ない理由はこういうところにある
のかもしれません。
この女酒で饂飩を食べたことを覚えています。汁は塩水を
暖めただけのような薄いものでしたが、麺は今の麺とほとん
ど同じでしたねぇ。
たぶん、続きます。
- 131 :自夜 :2006/12/13(水) 00:47:46 ID:JFOXLboS0
- >>130のまぐろさん
久しぶりに長文を書いているので、うまく書けているかどうか・・・不安ですぅ
ノンフィクションなんで、構成なんてせんでえーやろーおもうて始めた自分がうらめしやです。
そういや、幽霊時代に「うらめしや〜」なんて言ったことなかったですね。誰が始めたんだろう?
それはともかく、明後日からしばらくネットが使えないかもしれないので、書き溜
めた分を一挙にうぷしますね。
残りは明日なんとか仕上げて、前世の私と一区切りつけたいと思います。
- 132 :自夜 :2006/12/13(水) 01:00:02 ID:JFOXLboS0
- 第8話 葬式
今みたいに病院とかありませんので、割と簡単に人は死にました。医者という言葉
さえありませんでした。病気や怪我をするとまず隣村の寺に駆け込みます。坊さんは
それなりに知識があるらしく、何やら薬らしきものを飲ませたり塗ったりします。
呪いだけで直してしまうこともありました。怪我の場合は破傷風でも起こさない限り
直してしまいましたね。片輪になる人も多かったけど。破傷風は悲惨でしたね。苦し
んで苦しんで顔なんて変わってしまって死んでしまいます。もちろん破傷風なんて
言葉はありませんが、傷口から悪いもんが入って苦しめるという坊さんの説明。間
違ってはいません。
病気の場合は半分くらいは帰ってきませんでしたね。
昔流行病が流行ってこの世の地獄だったという話は坊さんから聞いたことがあります
が、幸いにして私が生きている間は流行ることはありませんでした。
さて、人が死ぬと坊さんの仕事は終わりです。今みたいにお経を上げてくれるわけで
はありません。
死体をみんなで墓地まで運んで土葬です。棺桶は使いません。直接掘った穴に入れ
て土をかけて石を置いて終わりです。生前身につけていた物を一緒に埋めてあげるこ
ともありますが、もともと持ち物が少ないので体だけ入れて埋める場合が多かったです。
着物は今まで着ていたものそのままですね。私と割と親しい若い女性が死んだときは、
ちょうど花の季節でもあったので、花いっぱい死体にかけて埋めてあげました。
みんな悲しいことは悲しいけど、いちいち泣きません。死人が出る度に泣いていたら、
枯れてしまいます。
墓地は共同墓地で村からちょっと離れたところにあります。隣村も同じ墓地を使っていま
した。嘘か本当か一番古い人は千年くらい前に死んだ人らしいです。
赤ん坊が死ぬと墓地には埋めず、家の出入り口の脇に埋めました。墓標もなんにもなし
です。まだ人生を送っていないので死人の国に送るのは忍びない。もう一度我が家に生
まれてこいとの意味があるのだと、ととちゃが言っていました。
たぶん、続きます。
- 133 :自夜 :2006/12/13(水) 01:02:17 ID:JFOXLboS0
- 前回は改行が多杉と怒られてしまいました。ちょっと読みにくいかも。
ごめんです。
第9話 希人
まれびとと読みます。旅人のことです。私らの村は街道筋から
外れたところにありましたので、旅人は本当にまれびとでした。
それでも、年に一回は行商人が珍しい物を持ってやってきます。
今の感覚では雑穀ぐらいしか売る物がない村に行ったって商
売にならないと思いますが、そう簡単に食べ物が手に入らない
時代ですから雑穀とはいえ確実に手に入れれる村はそれなりに
意味があるそうです。
希人の商品で人気があったのが男衆には手刀、ナイフですね。
女性には櫛です。櫛は漆塗りの本格的な物です。なんでも、
私らの村から30里くらい行ったところが漆の産地らしく、高価な
割に軽いので大量に仕入れてくるそうですが、背に腹は代えら
れず、途中で食べ物と交換してしまうので、京に帰るころには
すっかり数が少なくなり、大儲けするはずが、毎年とんとんだそ
うで、儂は莫迦だと言っておられました。
希人は貴重な商品以外にも、いろいろ面白い話を聞かせてくれ
るので、村としては大歓迎でした。いつも希人は隣村の寺に
泊まります。私らの村で客人を泊めるような余裕のある家がない
こともありますが、坊さんと希人は昔からの知り合いだとかなん
とかいう話でした。
たぶん、続きます。
- 134 :自夜 :2006/12/13(水) 01:05:31 ID:JFOXLboS0
- 第10話 青海
私らの村から旅に出る人はほとんどいません。まぁ、若衆の半分以上は
片道切符で旅に出るわけですが、これを除けばまずいません。せいぜい
港かお宮さんのある村か、そのちょっと奥にある焼き物をやっている村に
行くくらいです。もっと近くの村とは割と頻繁に行き来します。田畑も交錯
してますし、顔見知りも多いですし。切実な問題として水の分配の交渉も
あります。焼き物の村からお宮さんの村、隣村、私らの村、そして港へと
一本の川が流れていまして、ここいらの村の田畑はすべてこの川の水に
依存しています。水の話で拗れると殺し合いです。まぁ、だいたいなんと
か話し合いでけりがついていましたが。
で、港も焼き物の村も無理すれば日帰りで行き来が出来ます。
お宮さんの村へは村祭りの日は私らの村はほぼ全員でだらだら歩いて
行きます。で、向こうで一晩村人全員で野宿した後、まただらだらと歩い
て村に戻ります。
焼き物の村へは食器類を仕入れに行くわけですが、だいたい男衆の代
表が行ってましたね。食器類と言っても素焼きの質素な物ですが。あと
は木を刳り抜いた物。これは自家製ですね。
港へもだいたい男衆の代表が行っていましたが、何回かととちゃに連れ
られて行ったことがあります。
初めて海を見たときはびっくらこきましたねぇ。ベタですが、「なんてでっか
い水たまりだろう」って。んで、船を初めて見たときもびっくりですよ。本当
に腰が抜けてしまいました。
その後だったと思います。坊さんから地球は丸いんだってことを教わりまし
た。まぁ、コロンブスより後の時代ですから、無理ではないんですが。あの
坊さん、どっからそんな知識を得たんでしょうねぇ。
たぶん、続きます。
- 135 :自夜 :2006/12/13(水) 01:08:49 ID:JFOXLboS0
- 第11話 港町
まぁ、とにかく人人人、人で一杯。これが港町の感想。
腰が抜けっぱなしです。京はこれの何倍もでかいんだと。
ととちゃ、なんであんたそんなことしっとんねん。
これだけの人が田畑もなしでどうやって食べていってるんだろう。
ととちゃにきくと、外国からやってきた船から荷物を下ろし、小舟に移し替え
て国内の別の所に送ったり、その逆をやったり、その時の荷物の運び賃と
か、港の使用料とか、そういうので稼いでいるんだと。まぁ、貨幣もそんな
に流通していませんでしたから、実際には荷物の一部をもらっていたんで
しょうけど。
それ以上に、船とか人の段取りをするだけで稼いでいる連中もいるとのこと。
そういう連中は紙にちゃちゃーっと文字書いて、ぺったんと判子押すだけで
倉にどんどん米が貯まっていくんだと。それを聞いて、何も作ってないのに
ずるい連中だなぁって思いましたねぇ。だいたい紙ってのは貴重品で、私ら
のノートは隣村の寺の庭の地面だって言うのに。
「ととちゃ、それが坊さんの言ってた「私腹を肥やした莫迦共」か?」
「うんにゃ、そいつら、ずる賢いけど、まだ人の為になる仕事をやっちょる。
これからこういう仕事で喰っていく奴がどんどん増えていく思う。それは、悪い
こっちゃない。坊さんの言う莫迦共は人のことなんてなーんも考えとらん連中じゃ」
「ふーん」
ととちゃとそんな話をしながら、私は海の向こうにある国とはどんな国だろうなんて、
思ってました。自分の国の京のことも知らないくせにねぇ。
たぶん、続きます。
- 136 :自夜 :2006/12/13(水) 01:13:56 ID:JFOXLboS0
- 前回は、ちょっと脚色入ってますかね。でも、だいたいこんな会話をしました。
第12話 落武
さて、そのころの女性の適齢期は数えで15-6歳、今の年齢で14-5歳ってところですか。
そこの■り、涎たれてますよ。
10歳を超えると大人と同じように野良仕事をするようになります。
私も呑気な少女時代を過ぎて、大人の仲間入りをした頃、村はじまって以来の大事件が
起こりました。
私らの村の猟区がある山は、その頂が3つの国に跨っており、今でもそれにちなんだ名前
が付いていますが、その猟区で落武者が見つかるという出来事が起きたのです。
まだ、少年に毛が生えた位の青年(なんか露骨な表現?)で、大怪我をしていたので、男
衆がとりあえず、隣村の寺に担ぎ込んだわけです。
当初は私ら若い女性は寺に行くことも禁じられました。だから保護(?)されたときの青年
の様子は直接には知りません。
一月くらいたったくらいでしょうか、ととちゃの話では随分疵も癒えて、寺の周りくらいなら
杖をついて歩けるようになったとのこと。でも、頑として自分の名前や何処の家来衆かは
言わないそうです。村も変な災いをしょいこむのが嫌で、役人には届けていないそうです。
その何日か後から、若い女性が交代で寺の世話に行くことになりました。そう何時までも
男衆や体力のあるおばちゃんを野良仕事から外しておくわけにはいかないからです。
何番目かで私の番が来ました。
その、あの、なんていうか、こういうことを書くのは非常に恥ずかしいのですが、一目惚れし
てしまいましたね。ぶっちゃけ、顔がモロ好み。 きゃー、こっぱずかし。
と、いうわけで、たぶん、続きます。
- 137 :自夜 :2006/12/13(水) 01:16:52 ID:JFOXLboS0
- 第13話 生駒
気を取り直してっと。
半年もすると、青年の怪我もすっかり直り(体はヒョウタン継ぎになっちゃいましたが)、野良
作業も手伝うようになりました。寺も出て、私らの村のとある家に居候するようになりました。
そこの家には私よりひとつ上くらいの娘がいましたから、私は面白くありません。でも私の家
は兄弟が多く、そこの家は少なかったので仕方ありません。
それでも野良仕事で会う時にそのことで拗ねたフリして青年の気を引いたり、まぁ青春ごっこ
をしていたわけです。楽しかったなぁ。心が通じ合ってると思ってましたしね。
それから3年後、適齢期となった私はその青年と一緒になり、腰が曲がって、地に着くまで幸
せに暮らしましたとさ・・・・・・ってなればよかったんですがね〜、そうはいきません。私には
野垂れ死にという運命が待っています。
季節は巡り、1年過ぎた頃、またまた大事件の発生です。騎馬2騎を先頭に、徒十余名の軍隊
が私らの村に突然現れました。
ちょうどその時野良仕事に出ていた私は最初何が起こったのか、全く判りませんでしたが、急
に我に返り、こりゃやばいと思うが早いか、傍らにいた青年を物陰に突き倒すようにして隠しま
した。近くに物陰は肥壷しかなかったんですが。
兵隊達は一通り、村を詮索すると、隣村へと向かいました。
何事だってことで、一同氏神様のところに集まって(一人文字通り臭いのがいましたが)ああ
でもないこうでもないと議論しているところへ、先ほどの兵隊達が戻ってきました。
誰か、縛って連れてきています。誰?近づいてきて、縛られている人の顔が見えたとたんに
村人に沸き上がる疑問と避難の無言の声。
あの坊さんが、 何故?
以下後半へ続く かもしれない。
- 138 :自夜 :2006/12/13(水) 01:23:10 ID:JFOXLboS0
- と、いうわけで、前半部分、1クール分が無事(?)終了しました。
こうやって、書いてみると、私の(前世の)人生前半分はけっこう幸せジャン。
なんで、こんな私が野垂れ死にを・・・・・・・・・
まぁ、今の人生、どこまで過ぎたか判りませんが、前世前半以上に能天気で幸せして
ますから、特に不服はありません。
長いこと、お付き合いいただきありがとうございました。私、これで、今日はお休み
させていただきます。
ほいじゃ、あしたもよろしく たぶん
- 141 :自夜 :2006/12/13(水) 12:20:37 ID:JFOXLboS0
- みなさん、おそようございます。
お約束通り、2クール目をうぷいたします。
2クール目から文体を少し変えてみました。無理矢理全26話に納めるためというのが
本当ですが、殺伐としたストーリー展開なので、殺伐と書いてみました。
- 142 :自夜 :2006/12/13(水) 12:24:47 ID:JFOXLboS0
- 第14話 坊主
その日、ととちゃとうえのおにちゃは丑の刻過ぎて戻ってきた。役所(多分代官所のこと、私ら
は役所と呼んでいた)に坊さんが連行された理由を確認しに行ったのである。隣村からも男衆
が来ていたという。
訳がわからない。訳がわからない。確かに口が悪い坊さんではあったが、役人に連れて行か
れるほどの悪口は言ってない。
ととちゃが明日もう一度行くという。村一番のじいさまが儂が行こうかと言う。なにかされても、
もう充分生きたから悔いはないという。なに莫迦なこといってる、年寄りがあんな遠くまで行け
るかよ。これはかかちゃ。役所は港の更に向こうにある。「私も行く!」気が付くと立ち上がって
そう叫んでいた私がいた。
ちらと青年を見る。一緒に立ち上がってくれることを期待したが青年は動こうとしない。少し青ざ
めてる?やはり追われる身なのだろうか。直接関係ないとはいえ役人の前に顔を出すのは気
が乗らないのかも知れない。
翌朝、夜明け少し前に村を出る。午の刻前には役所の前に着く。役所の前のやせ細った鳥居
のような門の脇に篭が置いてある。中に人影・・・
「坊さん!!」
「どぉしたぁ、おめーたち」
「どぉしたぁじゃないよ、なしてこがいなこと」
意外にも坊さんは元気だった。ひどいことをされた様子もない。
「なんかぁしらんがぁ、わしがぁなんかきにいらんことしたらしいー。でぇさらしだとぉ」
つづく
- 143 :自夜 :2006/12/13(水) 12:27:29 ID:JFOXLboS0
- 第15話 逐電
「なーもしんぺーするこたぁねー、わしをぉ殺す気ぃはぁねーらしー。おめーたちはむらぁかえりな」
「でも、坊さん・・・」
私らは篭の周りに集まった。番兵はいたが、止める気はないらしい。微動だにしない。
「じんせーむなしーもんだ。はなねーもんだ。でもなぁー、すてたもんでもねーだ」
「なにいってるだ、坊さん」
「殺す気ぃならそれもまた是ぇ、わしぃ殺したところでなーもかわらん。殺す方がよう知っとぉ」
そう言って坊さんはにぃ〜と嗤った。なに言ってる、坊さん。あんたは80まで生きるんだ!!
その時番兵が無表情であさっての方を向いたまま、つぶやくようにこう言った。
「もうよかろう。百姓共、村へ帰るがいい」
くやしかった、くやしかった、くやしかった、くやしかった、くやしかった。無性にくやしかった。
私らはとぼとぼと、村へ向かった。遠い道のりだが、皆足が進まなかった。
村の近くまで戻ってきたときはもう日が暮れかかろうとしていた。珍しくかかちゃが私の名で話かけた。
「自夜(本当の名前はちがいます)、覚えておき。この位の時分、妖怪が出るから」
「うん」
まるで、独り言を言うようなかかちゃ、生返事をする私。道の向こうの暗がりに見える何かの陰。
犬神様(狼のこと)?
その陰はお辞儀のような仕草をすると、さっと木立の陰に消えていった。
送り狼ってのは聞いたことあるけど迎え狼ってのは聞いたことないなぁ。とぼとぼあるきながら、私は
ぼんやりとそんなことを考えていた。かかちゃは念仏のように「ひきこまれないように」と繰り返す。
家に着いた私は、足の痛みで居留守をしていた父から青年が消えたことを知らされた。
私はその晩、声を立てず、ひたすら涙を流した。
つづく
- 144 :自夜 :2006/12/13(水) 12:30:50 ID:JFOXLboS0
- 第16話 薄情
青年は戻ってこなかった。坊さんは戻ってこなかった。
私は力無くただ日常を生きていた。ととちゃは「やっぱ、さむらいとは関わり合いになるもんじゃない」
と言う。かかちゃは「いろいろ事情があるんだよ」という。さむらいも、元からさむらいじゃぁない。
元はみんな百姓やった。これはじいさま。
人間ってのはつくづく薄情だと思う。次の村祭りの頃には私はすっかり立ち直って、人一倍はしゃいでいた。
女酒でももっぱら盛り上げる係だ。まだ猥談はできなかったけど。
でも、坊さんがいないのは寂しい。あの難しい顔して難しいこと言う坊さんがいないのは寂しい。役人を
小馬鹿にする坊さんがいないのは寂しい。酔うとくしゃくしゃな泣きそうな顔して人生の空しさ、儚さを
説く坊さんがいないのは寂しい。
でも、なぜか青年のことは思い出さない。
人間ってのはつくづく薄情だと思う。
私は数えで16歳になり、かかちゃがそろそろ逝き遅れを心配するようになった。
次の村祭りが近づいたある晩、私は突然「嫁拐」に遭った。
つづく
- 145 :自夜 :2006/12/13(水) 12:36:45 ID:JFOXLboS0
- 第17話 嫁拐
よめごさらい。嫁盗み(よめごぬすみ)として、今でも某地に残っているらしい風習、というより奇習。
前世の私の時代でもとうに廃れた風習。突然数名の若衆が私の家になだれ込み、私を拉致して戸板に乗
せて運び去る。「よめごさろーた、よめごさろーた」と大声で叫びながら。行き先はどうやら隣村らしい。
(例の坊さんが教えてくれた)知識として嫁拐は知っていたので、多少驚きはしたものの、パニックに
なることはなかった。むしろ、誰がさろーてくれたのか、そっちの方に興味があった。もっとも何時振り
落とされるかという恐怖は最後まであったが。
連れて行かれたのは隣村でもはずれのところ。こっちの方には来たことがなかった。待っていたのは私の
家といい勝負のみすぼらしい家。そして大男。
面識がないわけではなかった。でも、特に話をしたような記憶はなかった。よく見ると、ごつい体だけど
目だけは奇妙にかわいかった。仁王さんにキューピーさんの目と言えばご理解頂けるであろうか。私は最
初は声を殺して、そのうち我慢できなくなって、大声で床を叩いて笑い出していた。さらった方がきょと
んとした顔をしている。それを見てまた大笑いし、最後には私は床を転げ回って笑っていた。はしたない。
その時初めて大男の名前を知った。(原作、もとい、自夜をパクらせてもらった作品から再度パクり、以
降「火袋」と呼ぶ。本当の名前は田子作系のもっと普通の名前)
後日知ったことだが、大騒ぎになったのは、それぞれの年寄り連中らしい。隣町の長老はうちの若いもん
が大変なことをしたと神主を叩き起こして正装を借り受け、私が火袋の家に着く頃にはもう古式ゆかしき
口上を述べに私の家にたどり着いたという。対応したととちゃも物知りとはいえ、正式な対応を知らない。
私の村の長老を叩き起こしに逝き、それでも判らないので再度神主を叩き起こしに逝ったという。神主こ
そいい迷惑である。ともあれ、翌日には火袋と私は夫婦になった。
つづく
- 146 :自夜 :2006/12/13(水) 12:40:56 ID:JFOXLboS0
- 第18話 火袋
火袋の父母は既に亡くなっており、私が嫁ぐ前には洟垂れ弟との二人暮らしだったそうだ。弟妹は沢山生
まれたが、洟垂れに生まれ変わった以外は皆出入り口先に眠っている。で、いい年にはなったが、親がい
ないため嫁の取り方が判らない。それを若衆に相談するのもどうかしているが、そこに適当な入れ知恵を
した馬鹿者がいて、件の奇行に及んだらしい。神主に謝れ。その馬鹿者と一緒に土下座して、神主に謝れ。
家族には恵まれなかった火袋ではあったが、村の若衆(総領=あととり以外の青年)には慕われていた。
若衆が出て行かずに済む村を作るんだが口癖で、新田作りが生き甲斐であった。勿論、役所に無届けの
新田作りは御法度である。届を出せば、折角作った田畑も最終的には村のものにはならない。なにがあっ
たかは火袋は話してくれなかったが、生涯役人を恨むような相当な出来事があったらしい。
ともあれ、火袋の働き者のよき女房として、一抹の不安を感じながらも私は幸せな日々を送った。
そして、半年が経ち、次の村祭りがくる頃、私は私のお腹に新しい命が宿ったのを感じた。
火袋の喜び方は尋常ではなかった。お宮さんというお宮さんを廻っては安産祈願をしたり(その割には
安産の神様で有名な例の大きなお宮さんには逝かなかったり。ちなみに安産の神様は戦いの神様の母堂
で、共にそのお宮さんの主祭神である。嗚呼、また場所が特定されるようなネタを・・・)、とにかく
危なくないようにと私を寝たきりにさせようとしたり、それじゃぁかえって体に悪いからと言うと、今
度は急き立てるように私を動かそうとするし。現世の旦那を見ても、男ってのはどうしてああ極端なん
だろうと思う(おたくの旦那さんはどう?)。
その間も若衆の面倒はよく見たし、洟垂れ弟の世話もよくした。これが火袋の偉いことだと思う。
年が変わって、私は男の子を産んだ。
つづく
- 147 :自夜 :2006/12/13(水) 12:45:27 ID:JFOXLboS0
- 第19話 水子
我が子だからそう思うのか、とにかく可愛い赤子であった。珠のようなとはよく言ったものだと思った。
産声も元気よかったし、お乳もよく飲んだ。火袋の顔は崩れっぱなしであった。
私は夢を見ていた。頼りがいがある夫。夫によく似たたくましい息子。若衆の笑い声。村人の笑顔。
一月も経たないうちにその赤子は泣かなくなり、出入り口先の土まんじゅうの仲間になった。
その晩、私は動くのも億劫で、完全に虚脱状態。涙はでなかったが、一晩中泣いていたと思う。
火袋の鳴き声は港の沖の海を越えて向こうの国まで聞こえるほどに大きかった。火袋の涙は洟垂れ弟ご
と家を川まで押し流すほどに流れ出ていた。この人は弟妹が死ぬたびにこんな泣き方をしていたのであ
ろうか。洟垂れ弟が平然と寝ているところを見ると、そうであったのかもしれない。そうでなかったの
かもしれない。私たちが何か悪いことをしたのであろうか、そりゃぁ御法度の新田作りはしている。で
もそれがそんなに悪いことなのか。見当違いな自問自答であることはわかっていた。もう夢は見れない
のかも知れない。そんなことも考えていた。考えても仕方ないと考えていた。
「じんせーむなしーもんだ。はなねーもんだ」あの坊さんの声が聞こえる。何回も何回も。「じんせー
むなしーもんだ。はなねーもんだ」でも、いつまでたっても聞こえない。「すてたもんでもねーだ」の
声。
次の日、私たちはたくましい百姓と働き者の女房、そして洟垂れ小僧に戻った。
また、いくつか時が過ぎた。
つづく
- 148 :自夜 :2006/12/13(水) 12:54:37 ID:JFOXLboS0
- 第20話 帰還
唐突に坊さんが戻ってきた。いくぶん太ったようだ。
「ろーやんなかはよぉ、さけだしてくれんけん、めしばーかくっとったわ」
どこまでもかわいくな坊さんである。
坊さんによると、天守様(守護大名のこと)の所は大変らしい。
「ありゃぁ、かんぜんにぃにげ支度だなぁ」
坊さん曰くの馬鹿者共(戦国大名のこと)がどんどん包囲網を固めているらしい。それで、坊さんのこと
をかまっている余裕がなくなったとのこと。
「やつらも、ぼーさん殺すと罰があたるくれーのこたーぁ、しっとったーちゅうこっちゃなぁ」
どこまでも 以下省略。
「あれはおまえが5つんときに折った枝だぁ、このへいぶっこわしたんはぁ、おまえが7つんときだった
かなー」
次々に過去の悪事が坊さんに明かされて、火袋は憮然としている。けっこうかわいい。
日頃表情をださない洟垂れ弟が坊さんの帰りをすごく喜んだのが意外だった。坊さんも弟を気に入ってる。
「ありゃーあほうみたいなつらしとーけど、なみじゃぁねーかしこさやどー」
そう言われて改めて見てみると、確かにそういうところはある。
ある晩洟垂れが空を見上げていて「あ、星が動いた」と言った。その時代の私ら凡人はそれが本当なら
なにか悪いことの前兆ではないかと思うところである。ところがその洟垂れは「なんでかなぁ、まだまだ
わからんことが多いなぁ」ときた。若くして戦乱に巻き込まれて死んだのは残念に思う。他人の転生には
あまり関心のない私であるが、この洟垂れは生まれ変わってどえらいことをしてもらいたいと思う。
つづく
- 150 :自夜 :2006/12/13(水) 12:56:39 ID:JFOXLboS0
- 第21話 火手
坊さんが戻った翌年の暮れ、私は女の子を産んだ。火袋の反応については省略。海向こうに迷惑をかけ
てなければよいが。
この子は前の子と違い弱々しい子であった。鳴き声も弱々しく、お乳も、これでほんとに飲んでるんかい
なと思うくらい。そしてすぐ吐いた。
これで無事育つのやろうか。不安が胸をよぎる。
それからしばらくした夜、若衆の一人が私の家に飛び込んできた。火袋に余計なことを吹き込んだ馬鹿者
だ。興奮して何を叫いているかわからない。火袋はすぐに家から飛び出、「隣村が家事だぁ!!!」
私もすぐ飛び出した。私の生まれ育った村が燃えていた。ととちゃ、かかちゃ、おにちゃ、おねちゃ。
「逃げろ、急げ」急き立てられて山へ走った。腕の中で、赤子が揺れている。首もまだ座っていない赤子。
揺れるたびに頭がもげそうに思える。「あんた、もうちょっとゆっくり」「莫迦やろ、死にたいんか」
この子となら死んでもいい。坊さんが裾をからげて奇声を上げながら走ってきた。「きたぞーきたぞーきたぞー」
坊さんも命が惜しいらしい。「殺す気ぃならそれもまた是ぇ」ゆーとったやんか、坊さん。あれは嘘か。
気が付くと、猟場のある山の中腹まで来ていた。夜は明けようとしていた。赤子を見る。よかった。首は
もげてない。揺すってみる。口をゆがめてめーめー泣き出す。よかった、生きてる。
見渡すと近隣の村の顔見知りもいる。ずいぶんここに逃げてきたみたいだ。
「こっちへ」火袋が手をつかんで洞窟の方へ向かう。洞窟? こんな所に洞窟なんてあったっけ。
洞窟の中に入って、私は暫くの間、阿呆のように口をあけていた。米俵、米俵、米俵。いつの間に、どこから。
そうか、納米。毎年氏神様に納めるお米。こういうときの為の備蓄米だったんだ。それまで氏神様に捧げる物
と本気で信じていた私は・・・莫迦?
つづく
- 151 :自夜 :2006/12/13(水) 13:00:19 ID:JFOXLboS0
- 第22話 抗戦
いつの間にか、酒樽が開けられていた。「おまえも飲め」初めて飲む米の濁酒。うまい。甘い。
口移しで赤子にも舐めさせてやる。お乳の時より吸い付きがいい。これこれ、それはかかちゃの舌だよ。
こりゃぁ、酒飲みになるなぁ。
洞窟の入り口の向こうに村が見える。いや、村だったところが見える。遠くに港あたりが見える。盛んに火を
上げているようだ。あの一杯の人たちも逃げまどっているんだ。
洞窟の入り口あたりで、どこかの村の長老らしき人がしきりに演説をしている。よく聞き取れない。
「いよいよくるべきもんがーきたなー」坊さん、何うれしそうに酒のんでんねん。
坊さんの説明では東からの馬鹿者共と南からの馬鹿者共がこのあたりの土地を狙っていたらしい。昨夜来の
襲撃は東からのものらしい。でも、百姓までやっつけたら乗っ取る意味ないじゃない。
「それがーよー、やつらも人がよーけおってよー、そいつらをこの土地にいれるが。この瑞穂の土地によー」
瑞穂、たわわに米が実る様子、そのような豊かな土地の意味。みずほちゃん。花に囲まれて埋められた女の子。
貴女はよかったね、みんなに送って貰えて。ととちゃ、かかちゃ、おにちゃ、おねちゃ、うえのおにちゃのき
れいなお嫁さん、そして洟垂れ弟。かわいそうに、だれも埋めてくれない。だれも送ってくれない。
「で、これからどうなるの。どこまで逃げるの」
「逃げるのはここまで。盗られたものは取り返す。」
にぃっと嗤う火袋。ちょっと、火袋、本気?
つづく
- 153 :自夜 :2006/12/13(水) 13:03:40 ID:JFOXLboS0
- 第23話 転落
私らは菰を被って浮浪者、まぁ乞食のふりをして港町だったところにいた。与えられた任務は敵陣偵察。
町は方々焼け崩れていたが、何軒かは無事なようだ。私らのような乞食があちこちさまよっている。おかげで、
私らも目立たずに済む。脇に忍ばせた手刀が思い。これは万一の時の自決用。この町が本格的に焼き尽くされる
のはこれから何年か後、南からの馬鹿者共によってである。その後、何年も某やせっぽちの天下人に復興される
まで無人の荒野となる。今の反映ぶりが嘘みたいだ。この時の私たちはそんなことは知らない。
町はずれの川の中の洲に何本もの磔台。手前の人物に見覚えがある。あれは、希人。あの行商人?
「間者だったんかなぁ」と相棒。「じゃぁ坊さんも間者?だから役人に捕まった?」「ん〜、どうかなぁ。五分
五分ってところかなぁ」
「町の連中はだめね。ぜんぜんまとまっていない」洞窟の中で報告する私。
「山向こうの連中は?」「あっちはあっちで手が離せないらしい」「じゃぁ、やっぱり俺たちだけでやるしか
ないか」「きびしいなぁ」
そして、決起の日。冷たい雨の日。走る走る走る。意外と弱い抵抗にこれはいけるかなとおもったその瞬間、
うなりを上げて飛んでくる矢、矢、矢。もろに額に矢をうけて、奇妙なうなり声を上げて崩れ落ちる乞食の相
棒、腹を射抜かれて悶絶する若衆、いち早く逃げる坊さん。「わしゃぁ、ぼうずじゃぁ。最後にみなを弔わな
いかんのじゃぁ」嘘付け。弔ったことなんて一度もないじゃないか〜ぁ! そして、あっという間の敗北。
そして、舞台は再度洞窟。私は怒っていた。「なによなによ。百姓一致団結してさむらいから土地を取り戻す
なんて威勢のいいこと言って、今じゃ追い剥ぎでかつかつ生きてるだけじゃない。」しょぼくれる火袋と若衆。
あ〜ぁ、女山賊ならまだしも、こそ泥にまで落ちてしまった。
つづく
- 155 :自夜 :2006/12/13(水) 13:39:50 ID:JFOXLboS0
- 第24話 放浪
転がりだしたら下り坂。最初のうちは行き倒れた人の持ち物を頂いていたのだが。備蓄米もまだあったし。そのう
ち、生きている人の持ち物まで狙うようになってしまった。新しい領主様は領地の治安維持に熱心な方で、良民保
護のため、山賊狩りに熱心である。誰が私らを山賊(実はこそ泥)にしたんだ。人の土地奪っておいて、何が良民
だ。いくら叫んでも実力を伴わない身の悲しさ。すぐに仲間はちりぢりになり、気が付いたら親子3人、物乞い稼業。
遂に本当の乞食。
きっと坊さんがちくったんだ。やっぱりあいつは間者だったんだ。今度見かけたら、あいつだけはぶっ殺してやる。
その時は本気でそう思ってましたし、その怒りのみで生き続けたようなもんだ。
少しでも多くの物を恵んでくれる所を、出来れば猫の額でもいいから耕せる田畑を、と都合のいい望みを抱きつつ
やはり世の中は甘くない。いつ果てるともない放浪の旅。歩けばそれだけ腹が減る。
どこをどう歩き回ったか判らない。でも、夏が来て、秋が来て、冬が来て、春が来て、これをもう一度繰り返すまで
親子3人なんとか生きてきた。
子供もかぞえで4歳。
しかし、この子はなんでもよく食べるねぇ。私や火袋は煮炊きしても顔をかしめないと食べれない芋虫や、蚯蚓、蛭
でさえ、生で美味しそうに。ごめんね。ととちゃ、かかちゃが不甲斐なくて。
2年も放浪しているとだんだんコツがわかってくる。どんなにお腹が減っていたって、夜、星を見ながら火袋が語る
夢を聞いているのはそれなりに心地よい。「また出来もしないこと言って」などと相づちを打つのも楽しい。
そんな親子3人の旅も唐突に2年ちょっとで終わった。
つづく
- 156 :自夜 :2006/12/13(水) 14:05:28 ID:JFOXLboS0
- あれ?
ここ連投禁止でしたっけ?
- 157 :自夜 :2006/12/13(水) 14:09:55 ID:JFOXLboS0
- あぁ、大丈夫ですね。単に長すぎただけのようです。
あと、2話分、ちょっと校正します。
- 160 :自夜 :2006/12/13(水) 14:28:27 ID:JFOXLboS0
- 第25話 乱世
しゃべり方がちょっと変だなと気付いたときは、既に手遅れだったと思う。梅雨時、雷をきっかけに、火袋が
突然苦しみ出した。以前見たことがある苦しみ方と同じ。みるみる形相が変わり、3日3晩のたうち回り苦しみ
抜いて、火袋は動かなくなった。私は物心ついてから2回目の涙を流した。
私は子供と一緒に深い穴を掘った。素手で掘った。大切な手刀はまだ駄目にするわけにはいかない。私と子供は
まだ生き抜かなければならない。土が雨で柔らかくなっていたのが助かるなと思った。
火袋を穴に入れて、2人で土をかけた。墓標代わりの石を探していると、子供が地蔵さんを指してこれが良いと
いう。それは駄目だよと子供を諭し、適当な石を見つけて2人で運ぶ。この頃一人遊びが多かったせいか、かか
ちゃと一緒になにかするのが楽しそうだ。子供は無邪気だ。石を置き、簡単な念仏を教え一緒に唱えた。この子
にも、普通に生きれる術をおしえてやらねばなどと考えながら、一生懸命念仏を唱える子供を見ていた。
その時、遠くから蹄の音が聞こえ、スローモーションのようにゆっくり走りながら一騎の騎馬が駆けてきて、
作ったばかりの土まんじゅうを 踏んだ。全身の毛穴から怒気が吹き出し、髪の毛が逆立つのが時分でも判る。
子供の方が動きが早かった。飛んでいく石、首筋に当たり嘶く駒、振り返りながら真っ赤な目で刀の柄に手をか
けるさむらい。全てがスローモーション。私は腰に差していた手刀に手をかけた。
私は鬼になっていた。初めて人を殺めた。指が硬直している。手が動かない。ふと、蹄の音が遠ざかるのが聞こ
えた。しまった。見つかる。私は子供を引きずるようにその場を立ち去った。
つづく
- 161 :自夜 :2006/12/13(水) 14:48:18 ID:JFOXLboS0
- 第26話 無惨帖
他人の猟区を荒らすと殺されても文句は言えない。だから、今までは山を避けていた。
今はさむかいから逃げるのが先だ。私と子供は山に入った。古兎のように、用心深く身を隠しながら。
夏の間は蛇、山鳥が獲れた。畑から未成熟の作物を盗ることもあった。利き腕が次第に痺れるようになり、獣が獲れなくなっ
た。火袋の穴を掘ったときに剥がした爪から悪い物が入ったのか、人を殺めた罰か。秋になると山苺、あけびなどの果実が
手に入った。たまに獲れる獣や蛇などは子供に与えた。私は体力が衰えつつあるのを感じていた。
その年、初めての雪が降り、私は時分の迂闊さに気付いた。ここ北斜面に当たる。じき、深い雪に閉ざされる。
雪が積もる前に峠を越えて南斜面に移動しなければ。
遅かった。峠は雪が降り積もっていた。私は途中で動けなくなり、子供に覆い被さるようにして倒れた。単衣である。寒さ
が骨にしみる。でも、こうやって覆い被さっていると、子供だけは寒くないだろうと思っていた。そのうち何故か暖かくなっ
てきた。熱いくらいだ。特に子供に接しているお腹が熱い。雪の中だから寒くて当然と頭では思っている。でも熱い。この
矛盾に頭がおかしくなった。意味もなく笑い出したくなる。立ち上がって暴れたくなる。「おかしいね、雪なのにとてもぬ
くいね」「かかちゃ、ちっともぬくーない」「おかしいね、雪なのにとてもぬくいね」「かかちゃ、ちっともぬくーない」
と繰り返していた。子供はかかちゃが狂ったと思ったことだろう。やがて目の前に黒い陰が降りた。
私は私にすがって泣き叫ぶ子供を少し上の方から冷たい目で見ていた。
きのえね(甲子)の年(永禄7年)、私は死んだ。
完・・・たぶん
- 163 :自夜 :2006/12/13(水) 15:05:28 ID:JFOXLboS0
- 第1部前世編の完了です。
長文におつきあい頂いてありがとうございました。
>>139さん、>>140さん、>>158=159さん、>>162さん まとめてですみません。ありがとうございました。
毎回の引きが同じようなパターンなのは私の文才のなさがなせることです。
なんか、場所が特定できそーなこといっぱい書いちゃいましたが、私からここですとか当たって
ますとかは申し上げられません。
第2部幽霊編は今のところ書く気がありません。そんなもん書いてしまったら、第3部現世編と
いうコメディーまで書かされてしまうことになってしまいます。これは絶対に避けたい。
第2部の抜粋くらいはここでほんのちょこっとくらいは書くかも知れませんけど。
正直自分が死ぬ話を書くのがこんなにしんどいとは思いませんでした。
第12話のこっぱずかしさをマイナスにして4242倍したくらいのダメージを受けました。
思い立っても、ぜーったいやんないほうがいいです。ほいじゃ
ひのえいぬ(丙戌)の年(平成18年)、自夜は4242倍のダメージを受けた 自夜はお腹が空いた
- 165 :自夜 :2006/12/13(水) 18:58:33 ID:JFOXLboS0
- >>164さん
私への質問でしょうか?
1.共通する人はいません っていうか 私自身、別人になってますので
2.私、霊感ないので判りません
- 168 :自夜 :2006/12/13(水) 19:22:27 ID:JFOXLboS0
- >>166さん
ん〜、ずっと見てたのは数年ですね。子供が気がかりという念が残って幽霊になった
わけですから。
>>167さん
本人が気付いていないだけでいろいろあるのかもしれません
私の場合、むしろ幽霊やってたせいで、どーでーも いーいでーす よー癖がついたと思います
- 172 :自夜 :2006/12/13(水) 19:46:43 ID:JFOXLboS0
- >>170のまぐろさん
子供は、まぁ、無事(?)成長しました。
>>171さん
幽霊になれば同族ですから幽霊は見れます。っていうか、感じることが出来ます。
妖怪の類もよく見えるようになります。連中、幽霊には無関心なんですよ。わりと。生きてる
もんが好きなんでしょうね。自分も生きてるわけだから。
幽霊の時、人間と会話したことはあります。例外的にですが。
幽霊どうしは互いに興味をもってないので、あまり会話はありません。全然ないわけじゃ
ないですけど。中には幽霊に取り憑く幽霊もいますし。
守護霊、背後霊については否定的です。単にくっついてるだけの幽霊はけっこういますが。
私の子供には霊はついてなかったですね。私以外は。
すんません。とりあえず、おちます。いずれ、戻ってきます。
- 189 :自夜 :2006/12/15(金) 01:24:51 ID:nA9ekdf50
- 昨日まで自由な独裁国にいましたが、今日から2〜3日、検閲の厳しい国です。
2chに繋がるかどうか心配してましたが、大丈夫なようです。その後、まだクーデター
やってるはずの国により、独裁国家に戻ります。日本に戻るのは一番寒い頃かな。
>>175さん
人間のいろんな感情のうちの一つとして念と私が勝手に呼んでいるだけですが、まぁ
形而下(意識下)の後ろ髪引かれる思いって言い換えた方が判りやすいかも知れない、
これが死ぬ瞬間にあると幽霊になり安いようです。だから、選択肢はいろいろあると
思います。実際に幽霊に取り付いた幽霊は、死ぬ瞬間にだいたい未練のない人生送っ
てきたから不満はないけど、まだ幽霊というものを見たことがないなぁってなことを
ぼんやり考えていたようですから。
念というのはこのように形而下のものですから意識的に思考するものはだめみたいです。
例えば死ぬ瞬間にもっと生きたいってのは普通に発生する感情と思いますが、それは生
き物の本能としての希望若しくは願望ですから、これを念として幽霊になるのは無理み
たいです。
また、子を思う親の心は誰しもそう変わるものではないでしょうが、死ぬ瞬間に他のも
のに気をとられたり、子供の行く末を具体的に考えたりすると、それは念より形而上の
ものとなるので駄目みたいです。
まぁ、意識的に幽霊になるのが不可能とは言いませんが、それが出来る人は幽霊なんか
になるより悟りを開いて人々のためになるようなことをやった方がいいと思います。
- 192 :自夜 :2006/12/15(金) 01:41:02 ID:nA9ekdf50
- >>182さん
妄想。否定しませんよ。現世の記憶だって妄想の産物であることを否定できないわけ
ですから。ただ、現世の記憶、前世の記憶、幽霊時代の記憶、これは私の中では序列
としては同列なんです。生々しさにおいて。だから、現世の記憶が本物であれば、前
世や幽霊時代の記憶も本物だと私は思っています。
歴史については(習ったのは前世の記憶を取り戻す前ですが)後付で得た知識で補完
しているところも多分にあります。馬鹿者共の軍勢の東とか南とかいうのは後付知識
によるものです。当時はもっと別の認識の仕方をしていたように覚えています。
年代もこれだったら辻褄があうなぁ、ってなもので、実際は60年ほどずれているのか
もしれません(実際に覚えているのは干支だけですから)。
> 「未練輪廻」=現世に残った未練に残りの寿命が移りその未練が見た
> 景色が輪廻中の魂に送るとゆう。
という説明はしっくりくるものがあります。ただその寿命が移った未練を幽霊と呼ん
でも差し支えないのではないかと思います。
最後に一つ。文才。これはないですね。あったら今普通のおばさんやってませんから。
(多感な現世の少女時代、文章で喰っていくのは無理と学校の先生に言われました。シクシク)
- 194 :自夜 :2006/12/15(金) 02:04:41 ID:nA9ekdf50
- >>190さん
あははは。痛いところをつかれました。
実はそのとき颯爽と若武者が現れて助けてくれました。嘘です。
窮鼠猫を噛むというか、単に運がよかっただけというか。
本編では字数(行数?)制限で泣く泣くカットしたんですが、うまいこと馬が暴れて
落馬してくれたんですね。で、甲冑着てるもんですから、普通に刺したって駄目なん
ですよ。で、何処狙ったと思います? 顔ですよ。顔。
落ちた人の兜をおもいっきし蹴っ飛ばして(その時足の指の骨にヒビでも入ったんで
しょうねぇ、しばらくしてまともに歩けなくなりましたから)、で、目と目の間狙って。
ゴキンって当たった後、豆腐を刺すようにすーって手刀が入っていくんですよね。
あの目も恐かったですね。カッと見開いた後、左右別々に小刻みにそのあとぐりんぐりん
回り出して。その後無茶苦茶に暴れ出すわけですよ。「ばおいひゅ;おえあhjふじこ」
みたいな声あげて。
私はやっぱり鬼の顔になってたと思いますね。子供が私から逃げようとしましたからねぇ。
あ〜ぁ、書いちゃった。今晩夢に出てきませんように(ー人ー)。
>>191さん 腰の浮き方が、ちょっと・・・
- 195 :自夜 :2006/12/15(金) 02:20:23 ID:nA9ekdf50
- >>193さん
言葉はかなり創作です。坊さんはあんな話し方してたですが、なんというかその時の
話し言葉ってのは記憶でははっきりしてるんですが、うまく文章にできませんでした。
現世の私自体があちこち転々とした御陰で話し言葉が無茶苦茶なんですよね。
旦那に言わせると平素は割と上手な外人が話すような共通語、酒を飲むとだんだん関
西弁、目が据わってくると100%ネイティブな九州(とある地方)弁、だそうです。
素面の時は九州弁なんて喋りたくても喋れません。
物書きは多感な少女時代に目指したことはありますが、しぇんしぇーにも止められま
したし、今楽して生きていますので、あえてしんどい世界に入ろうとも思いません。
でもまぁ、殺人事件現場とかいろいろ書き足りないところもありますんで、第1部前世
編くらいはリメイクしたいかなぁ、とは思っていますが。
- 196 :自夜 :2006/12/15(金) 02:54:21 ID:nA9ekdf50
- 子供の逝く末を案じられてくれている方がいるようなので、ちょっと書いておきます。
その前にいつまで経っても名無しさんじゃかわいそうなんで名前をつけておきますね。
本当の名前とは全然違うんですが、娘は「加由」。ついでにかかちゃは「湖亜」、私
の孫娘(第2部幽霊編の最終回あたりで登場)は「須磨」にしました。だんだん薄く
なっていってますね。某プロダクションからクレームが来たら上から「よね」「きび」
「あわ」「ひえ」にでもしましょうか。ととちゃはこののりで「鬼切」、洟垂れ弟は
「珠袋」ってのはどうでしょう。最後のは下品ですかね?
さて、某プロダクションこと、某大物漫画家(故人)のとある作品ですが、知らない方でも
ttp://book.tezuka.jp/recommend_20040527.html
ttp://ja-f.tezuka.co.jp/anime/sakuhin/subtitle/ts010.html
あたりを見ればだいたいの雰囲気がわかってもらえるかと思います。
私、子供の頃、この作品大好きだったんですよね。
というわけで、似ているのはだいたいの時代と元は百姓だったってこと、それに私の
野垂れ死に方くらいです。パクったのは約2名の名前だけです。某プロダクションさん、
そこんとこよろしく。
- 198 :自夜 :2006/12/15(金) 03:19:02 ID:nA9ekdf50
- 加由の話でしたね。なんだかスレを乗っ取っちゃってるみたいで悪いので加由の話が
終わったら、どっかに引っ越しますね。
私と死に別れた後加由はすぐ浪人に拾われます。浪人と言っても割と凛々しい若武者
です。私も最初はどっかのご家来衆かと思っていましたが、どこにも仕官していない
様子です。山に粗末な掘っ立て小屋を建てて、そこでひたすら武者修行をしているよ
うな人です。この時代、けっこうこういう一人で武者修行にのめり込む人は多かった
ですね。
加由はこの浪人に育てられます。そうそう、この浪人、私をちゃんと弔ってくれまし
たね。厳しくも優しい人だったと思います。加由はこの人の元でまるで男の子のよう
に厳しく育てられます。
加由が10歳くらいのことでしょうか、この浪人、決闘することになりまして、負けて
死んでしまいます。加由は浪人を弔った後、小屋を出て一人で旅にでかけます。
私はこの時加由とは別れます。その後加由が何をしていたのか知りません。
次に加由を見かけたのは数年後です。加由はとあるむらの百姓の女房になっていまし
た。かわいらしい赤子を抱いていました。
- 199 :自夜 :2006/12/15(金) 03:36:51 ID:nA9ekdf50
- >>197の190さん
別に失礼とか全然そういう風には受け取っていませんので気になさらないでください。
それより私の拙文を読んでくださってうれしいです。多謝(←もう影響されてる)です。
>>195にも書いているように、本になることはまずありませんのでご安心(?)下さい。
あぁ、でもどうせならここに書いているようなものでなく、昔書いた「大坂決起」って
いう話は本にしてみたいかな。憲法9条の「国際紛争を解決する手段としては、永久に
これを放棄」ってのと「国の交戦権は、これを認めない」っていう条項を楯にして大阪
市が独自に武装、自主自決をスローガンに大阪府警と戦う話。
最終編の「明日に架ける大正橋」なんて、我ながら感動的な話にまとまってると思って
いるんですがね。当時鶴町に住んでいて、それなりに思い入れもありましたし。
まぁ、オカルト話じゃないんで、この板ではなんなんですが。
- 201 :自夜 :2006/12/15(金) 03:55:42 ID:nA9ekdf50
- >>198のつづきです。
更に数年後、私は懐かしい人に出会います。あの坊さんです。
すっかり老け込んだ坊さんがとある村からちょっと離れた山の麓の掘っ立て小屋で
寝たきりの生活をしています。私はちょうど天井のあたりから見下ろしています。
その掘っ立て小屋に天井なんていう立派なものはありませんが。
坊さんが言います。
「だれかぁーおるのかぁー」私は黙っています。
「だれかぁーしらんがーわしにーうらみをばもつもんじゃなー」そのとおりです。
「○○村のーもんじゃなー。そのけはいはぁーおなごじゃなー」そうですそうです
そのとおりです。
坊さんは黙ってしまいました。私も黙っています。
つづく ・・・・・・つづいて、いいのか?
- 202 :自夜 :2006/12/15(金) 04:25:44 ID:nA9ekdf50
- >>201のつづきです。
「自夜かぁ」坊さんがぽつりと言います。ぽつり、ぽつりと独り言を言うように。
(実際独り言なんですが)
「さぞかしぃーわしをぉ、にくんじょるじゃろーなー」憎んでます。恨んでます。
もし、方法を知っていたならば、この場で取り憑いて殺しています。
でも方法も知らないし、そのころの私はそんなことどーでもいーと思っていました。
「わしをぉー、つれにきたかー」
「あんしんしーやー、わしゃー、じきそっちへーいくけー」こられても困ります。
また、ひとしきり沈黙があったあと、
「そこのーみてみぃー、にぎりめしー」確かに坊さんの枕元に握り飯がおいてあり
ます。掘っ立て小屋には似つかわしくない御馳走です。
「しっとったかー、おめーのまごがのー、まいにちぃ、はこんでくれよー」もちろん
知っています。死別したころの加由にうり二つの可愛い孫娘、須磨。あのころの加由
より少し年嵩でしょうか。
「おめーのがきんときにのー、そっくりじゃぁー」さすがにそこまでは知りません。
「めしのにぎりかたもよー、しょっぱさもよー」どうやら焼け出された後の洞窟での
話のようです。確かに他の女衆と握り飯を作ったことはありましたが、この坊さん。
酒ばっかり飲んでたじゃないか。
また、しばらくの沈黙の後、
「あんときぃ、わしぁのー、たしかにぃかんじゃじゃったー」
つづく
- 204 :自夜 :2006/12/15(金) 04:58:25 ID:nA9ekdf50
- >>202のつづきです。
坊さんの独り言をそのまま書くと、あっという間に1000まで逝ってしまいますので、
要約します。その前に前回の分の補足。ふらふら幽霊していたときに、加由そっく
りの娘をみかけて、なつかしさのあまりふらふらと娘の後をついて逝きます。その
先に坊さんが寝たきりでいる掘っ立て小屋があったというわけです。孫娘であるこ
とを確信したのは須磨と坊さんとの会話から。「須磨、すまんのー(実際には本名
で話してますから洒落にはなってません)かーちゃんの加由は達者かぁ?」ってい
う坊さんの発言からです。
坊さんはやはりあの行商人の希人と組んで南の馬鹿者共に私らのとこの天主の情報
を流していました。私らの村のあたりに坊さんが住み着いたのは、役所まで1日で
往復できる便利なところであり且つ街道筋から離れていることから役人の出入りが
少ないことだったそうです。ところが、希人が情報をより高く買ってくれる東の馬
鹿者共の方に寝返ろうとし、坊さんとは仲違いして別れたそうです。坊さんを役人
に売ったのは希人ということになります。希人が処刑されたのは東の馬鹿者共から
3重スパイを疑われたことが原因のようです。
坊さんはあくまで南の間者だったので、私らの一揆をちくったのは自分ではない。
が、東の馬鹿者共が一揆のことを察知していることは知っていて、それを私らに言
わなかったのは密告したのと同罪だとのこと。私もそう思います。
その後、南の馬鹿者共も私らの土地から駆逐され、失業した坊さんは本当に坊さん
として戦乱の犠牲者達を弔う旅をしていたそうです。
つづく
- 205 :自夜 :2006/12/15(金) 05:34:47 ID:nA9ekdf50
- >>204のつづきです。
長い、長い、独り言が終わり、また坊さんは静かになりました。
「なぁー自夜よぉー」しばらく経って、また坊さんが言います。
「じんせーむなしーもんだ。はなねーもんだ」
そう言うと坊さんは深い息を吐き、動かなくなりました。そうして、消えていきました。
翌日、須磨が掘っ立て小屋を握り飯を持って訪ねてきます。
「よー、じーさん。にぎりめし、またもってきてやったぞー」
誰に似たのか、口が悪い。
入り口の菰をたくし上げ、中に入ってきます。すぐに異変に気が付いたようです。
可愛い手から握り飯が落ちて床をころがります。床といってもほとんど土間です。
須磨が膝を落とします。首を垂れて、泣いているようです。坊さんが死んでし
まったのが悲しいようです。気が知れません。
そのうち、床を叩き出します。立ち上がって入り口の柱に拳を打ち付けます。
掘っ立て小屋を壊すような勢いです。
私はふらふらと小屋の外に出ました。背中から須磨の声が聞こえます。
「ちきしょう、なんで死んじゃうんだよーっ。一緒に百姓の国つくるって言った
じゃないかー」
いつか聞いたような言葉だなぁと思いながら、私は小屋から離れていきました。
その後の加由と須磨のことについては知りません。
尾張生まれの猿が奥州を平定し、名実共に戦国の世が終わるまで、あと10年待た
なければならない時のことでした。
完
- 206 :自夜 :2006/12/15(金) 05:50:58 ID:nA9ekdf50
- と、いうわけで、なし崩し的に第2部幽霊編の最終回だけ、ちょっと書いてみました。
出来すぎの話だなぁ〜と思わないわけではありませんが、まぁ私にとっては事実です
し、これはもう仕方ありませんね。
偶然と言うより、私の娘、孫娘が住んでいると知って坊さんはその村に居を構えた
ようです。
さて、私が野垂れ死んだ峠は今県道が通っていて、ローリング族の溜まり場みたい
になっているようです。
火袋最期の地は今立派な高速道路になっています。どこにも土まんじゅうは残って
いません。地蔵さんは移設されて高速道路脇に現存しています。すっかり目鼻が流
されて、丸い石になっていますが。
村祭りのあったお宮さんも建物は建て変わっていますが健在です。なんと、お餅も
買えます。餡は甘い味になっていますので、安心してお買い求め下さい。
火袋が開墾していたあたりの地名は新田を意味するものです。でした。最近町名の
整理があり、地名としては消滅してしまいました。
- 209 :自夜 :2006/12/15(金) 15:14:15 ID:WmKO0AvT0
- >>207さん
トイレにPCを持ち込んででしょうか? トイレにLANポートがあったりして。すごい
会社ですね。
>>208さん
まんなかでございます。
恥ずかしながら、「な→か」でございます。今の今まで誤記に気付きませんでした。
リメイク版(書く気になってる?)では修正させて頂きます。
- 224 :自夜 :2006/12/16(土) 01:53:39 ID:ISutAZ4N0
- >211まぐろさん
どうもご迷惑をおかけしました。
乗っ取り状態は私としても忸怩たるものがありまして。
そういうわけで、今後私こと自夜関係のお話は下記にお引っ越しです。
このスレも見てますので、何かあれば声をかけてください。このスレに迷惑かからない
程度で。
スレ名:前世物語
URL:http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1166201140/l50
ほいじゃ、最後に>>まぐろさん。お世話になりました。
- 225 :自夜 :2006/12/16(土) 02:22:33 ID:ISutAZ4N0
- >みなさんへ
>>224の最終行の「最後に」は、このスレの間だけ忘れてください。
>>217 まぐろさん
そっちのスレは、それはそれで書き込んでいましたので、物語をうぷするのは適当
でないと判断しました。>>224の新スレの方に宜しくお願いします。
ところで>>まぐろさん
私は現世、幽霊時代と下履きを履いてなかったんですが、今時の幽霊はたしなみと
して、下履きくらいは履いた方がいいですかねぇ?
- 280 :自夜 :2006/12/20(水) 12:42:37 ID:6CSAUJ9K0
- >>270さん
前世の私の認識ですが・・・
有り難いのは書かれる文字であって、媒体は関係なかったですね。
御札は木板で出来てましたし。
これは後知恵からですが、貴重だから神棚に飾ってたって言うんなら、後世そ
んな有り難いものでおしりを拭くようになるとは思えませんが。便所の神様
の差し金かも知れませんがね。
- 292 :自夜 :2006/12/25(月) 19:38:57 ID:06vySfY60
- 唐揚げ
とワインで今上天皇のご生誕を祝ったのが一昨日。今日はビールとざるそばで、
名君大正天皇を偲びます。今日も相談事はありません。あ、ひとつあった。
明日は旦那の誕生日ですが、飲み物と食べ物は何が良いでしょうかね?
- 294 :自夜 :2006/12/26(火) 10:49:25 ID:TvrcSo3A0
- >>293さん
さんきゅうです。赤ワインと中性脂肪が溜まらないよう淡泊な、そう鰐肉にでも
してみます。
旦那におめでとうと言ったら、「もう目出度くない年だ」と言われました。
- 296 :自夜 :2006/12/26(火) 15:37:30 ID:TvrcSo3A0
- >>295さん
まず、貴方の性別・だいたいの年齢・子供の有無・ツベルクリン反応などを順序よく
書かないと、相談に乗りようがないと思います。それと、ageないと多分たぬきじゃ
なかったまぐろさんは気付かないかも。
- 298 :自夜 :2006/12/26(火) 23:31:52 ID:TvrcSo3A0
- >>297 まぐろさん
それはそれは、失礼しました。私は入れてないですねぇ。物語スレ。
- 302 :自夜 :2006/12/29(金) 11:30:56 ID:Xg94u8Y60
- 地震で海底ケーブルが切れてしまいました。2chになかなか繋がりません。
誰か、代わりに電波をとばせる人、又は受信できる人、いませんか?
>>300さん
境界性人格障害を初め、あらゆる心系病の診断チェック設問に全て該当しなかった
(それはそれで問題かも)私が(無責任に)アドバイスさせていただきます。
子供さんもいないそうなんで、思い切って離婚して自由恋愛を謳歌してはどうで
しょうか。少なくとも中出氏とか浮気とかで悩まなくてすみます。
今の世の中、生活費くらいは何やったって稼げるでしょうし、一人の老後が嫌な
ら、50過ぎてから結婚するってのもアリだと思います。
PCぶちこわす気になったら連絡下さい。引き取りに行きます。
- 303 :自夜 :2007/01/01(月) 17:31:39 ID:LnrtsUXx0
- あけまして、おめでとうございます。
せっかくだから相談します。
雑煮をつくろうとして、お餅を買ってないことに気付きました。去年の鏡餅がその
ままあるんですが、それでもいいですかねぇ?
- 305 :自夜 :2007/01/01(月) 18:29:09 ID:LnrtsUXx0
- >>304 【吉】【1962円】さん
駄目ですか。それなら仕方ないですね。旦那のにだけ去年の鏡餅入れて、私は
鏡開きまで我慢します。
- 307 :自夜 :2007/01/02(火) 19:39:14 ID:Dy1r7zCi0
- >>306 295さん
別に貴女の人生ですからイタイと思われようが、私らの税金から生保もらって生きていこうが、
何人と付き合おうが、堂々と生きていったらいいと思うんですがね、一つだけ言わせてください。
「びゃくや」じゃなくて、「じや」です。 どーでもいいことですが。
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